almost everyday.

its a matter of taste, yeah

タヒチにっきその5

目を覚ますと小雨。8時頃レストランへ、ボラボラでの食事もこれが最後です。というわけでやはり、パイナップルをこれでもかというほどたくさん食べました。これから先、パイナップルを食べるたびにこの島のことを思い出すのではなかろうかという気がするほどです。それも本望だわ、というくらいおいしいんですよ。本当に。
食事を終えた後、昨日と同様パソコンをチェック。サンスポ.COMにて未明の日本×北朝鮮戦が2−1と苦戦しつつもなんとか勝ったらしいのを知り、まずは何となくほっとしました。関連ニュースの「与党内『2−1くらいがちょうどいい』と安堵の声」には笑ったなぁ。気が気じゃなかったのでしょうね、たぶん。
部屋へ戻って荷物をまとめ、9時20分頃レセプションへ。精算すませて港へ向かいましょう・・・と思ったところでトラブルが起こりました。女主人より手渡された請求書に、まったく覚えのない20000CFPが加算されているのです。「どうせ言葉通じないしいいよ仕方ない払っちゃおうよ」とあきらめモードの相方を制してなけなしの勇気をふりしぼり「わっつ・でぃす?」と訊いてみたらば案の定ディスコミュニケーション状態に。相手の言いたいことはだいたいわかるのですが、それに対してどう答えたらいいのかがさっぱりわかりません。女主人は「昨日のマッサージが終わった後でサインした書類を見せてくれないとどうにもならないよ」というようなことを何度も繰り返しているのですが、困ったことに相方がその控えをなくしてしまったらしく。冷や汗かきつつスーツケースの中まで探したのですがやはり見つかりません。あーうー。どうしよう。
そんなこんなで困り果てていたところへ、ふたたび天の助けが。昨日と同じ女性2人連れが「どうしたの?」と声をかけてくれたため、これこれこういうわけでと事情を説明してみたところ「わかった、それじゃ何とか説得してみるから」と請け合ってくれました。英語を話せる日本人がこんなにも頼もしく見えたのは初めてです。ああ、後光が差して見えるー。お二人は女主人を相手にねばり強く交渉して下さり、最終的には何とか使途不明のお金を払わずに済むことができました。ああよかった。気持ちの上では畳に頭をこすりつけたいくらいの勢いで頭を下げ、ひたすら感謝。お二人は至ってクールに「だって払う必要がないんだからさー、そんなのぼったくられてらんないよ」と言うのみ。ありがとうございます。港まで送ってもらう車が一緒だったため、4人で車に乗り込み出発。いやな汗がなかなか乾いてくれません。くたびれた・・・。
移動中の車内ではぽつぽつと会話を。港に着いてみるとこれから乗り込むはずの船がまだ着いておらず、おまけに雨も激しさを増してきたのでしばし車内で待機することになりました。おふたりはニュージーランド在住だそうで、そうかそれであんなに臆せず喋ることができたのかーと今さらながら深く納得。荷物を預けて船に乗り込んだ後も、写真を撮り合ったりメールアドレスを交換したりして過ごしました。日本に帰ってから写真を送ります、と約束してお別れ。お世話になりました。
来たときと同じ国内線に乗り込んだ後は、まだお昼前なのにぐったり疲れてすぐに熟睡。機内サービスのコーヒーが出てきたのにすら気付かないままタヒチに上陸してしまいました。空港で待機していた日本人ツアースタッフさんの説明を受け、まずは本日のホテルまで移動することに。着いてみたら、これがまた豪勢な部屋でした。水上コテージでこそないものの、テラスに出ればすぐそこに海とプールが見えてしまう豪華っぷり。おまけにめちゃくちゃ広いです。快適すぎて逆に落ち着きません。貧乏性め。

部屋に荷物が届けられるのを待ち、水着に着替えてすぐ外へ。昨日のシュノーケルで海のとりこになってしまったため、今日も着いたら真っ先に泳ごうと決めていたのです。プールサイドにほど近いバーでウェルカムドリンクをもらい、ひと息ついていざ海へ。バーのお姉さんはとても気さくなひとで、カクテルに添えられたリキュール漬けのさくらんぼがおいしいと言い合っていたらにこにこ笑ってもう二つ同じものをくれたりしました。そういえばボラボラに比べてここは、格段に言葉が通じやすいような気がします。わたし程度のカタカナ英語でもそれなりに理解してもらえるし。さすがは首都。ありがたいことです。
で、海はというと。昨日の現実離れしたうつくしさには及ばないものの、それでも魚は同じように色とりどりでした。ボラボラと違って潮の流れが速いので、シュノーケルよりはダイビング等に適した場所なのかもしれません。ライフジャケットを着込んでカヌーにも乗ってみましたが、案の定波に揺られて流されるのみ。そういえば自分、人力の船に乗るのはこれがたぶん初めてです。相方も漕ぎ方がまったくわからないらしく、直感的に身の危険を感じたため早々と引き上げました。雨もぱらついてきたので、プールにちょっと寄り道したらすぐ部屋へ。お風呂に入って塩でぎしぎしの髪を洗います。きっと今、わたしの髪はおそろしい勢いで傷んでいるのでしょう。シャレにならん量の抜け毛が我が頭皮の惨状を物語っています。こわいこわい。

ひと息ついた後、とりあえずホテル周辺を散歩することに。まずは近くのカフェっぽい店に入り、ピザとキッシュを食べました。いずれもふつうに美味しかったしお店の雰囲気だって悪くない、というわけで和やかな午後のひとときを過ごす、はずだったのですが。オレンジフレーバー入りのボルヴィックを半分以上も飲んだあと、わたしはようやくその異常に気がつきました。買ったときにはきりきり冷えて結露していたのでボトルの中身がよく見えなかったけれど、あらためてじっと中を覗いてみると何やら白くてもやもやしたものがふわりふわりと浮かんでいるのです。さらにじーっと凝視してみると、その浮遊物にはうっすら黒っぽい斑点もついていたりして・・・。これはもしかするといわゆるカビってやつなのでしょうか。あわてて賞味期限を確認してみると、それはまだ遠く1年以上も先の日付。だってのにもう水が腐っちゃうんですか?南国ミラクル?って感心してる場合ではもちろんなくて、わたしってば既にこれをぐびぐび飲んでしまった後なのですよ。どうしよう。異国の地で体調を崩した原因がカビ入りミネラルウォーターだなんて、あんまりにも間抜けすぎます。かっこわりい。そんなこんなで楽しかった気分は一気に急降下、悲しいと言うよりむしろ怒りに近い黒い気持ちがむかむかとわき上がってきました。さっきまではこの上なくナイスガイに見えていたカフェのおっさんでさえ、今にも呪い殺しそうな勢いです。怒りと凹みと後悔と恐怖がないまぜになった青い顔でとりあえず店を後にし、「飲んじゃったもんはどうしようもないんだから、腹がこわれたらそのときはそのときってことで」と無理やりおのれをなだめすかして隣のスーパーへ買い出しに。来るなら来いや、太田胃散も正露丸も常備してるんだから。とは思いながらもやっぱり怖いです。ううう。
しかしそんな気分も、半分くらいは入店と同時にすーっと消え去りました。ボラボラの小さなスーパーとはまた違う大型店舗、かなり見応えがあります。まるで傘のように剥き出しのまま立てて売られているフランスパン、巨大なシフォンケーキ(直径が大人のウエストよりも大きいのです!)うさんくさげな日本食のデリ、やたらと愛らしいパッケージの離乳食などなどご当地もの?の食べ物がたくさん。楽しいです。ちなみに、ここで売られていたホームサイズのアイスクリームにはバニラビーンズがまるごと1本埋め込んでありました。豪快。ていうか贅沢すぎます。
 
夕食用にサラダとお総菜、それとフランスパンを1本買ってふたたび部屋へ。そういえば、この時点で先ほどの食事からすでに2時間あまり経過しましたが、今のところまだお腹は壊れていないようです。浮遊物を直接口に入れなかったのが勝因でしょうか。とは言っても、それにしたってちょっとばかし頑丈すぎやしないか俺の胃袋よ。などと自分につっこみながらもひとまず安心。体調がよければそれに越したことはないのです。よかったー。
部屋へ戻って全編フランス語のテレビを眺めながら(なぜか『めぞん一刻』が放映されていました。これもやっぱりフランス語版です。すごく妙な感じ)ぼんやり過ごしていると、雨が上がって晴れ間が見えてきました。こちらへ来てから、まともな夕焼けを見るのはたぶんこれが初めてです。夕方はずっと雨か曇りでしたよ。というわけで海まで出てみることに。
水平線の向こう側から透き通るようにこちらを照らす赤い光はいつか何かで間違いなく見たはずの南の島の夕暮れの景色そのもので、うつくしいと思うより先にまずこの明確すぎる既視感にとまどいをおぼえました。何しろまるで絵はがきの図柄みたいに、旅行雑誌のグラビアみたいにまるっきり完璧な景色なのです。ため息さえ出ないくらいの。

たくさん写真を撮って部屋へ戻り、食事をとって明朝のルームサービスを頼んだりして早めにベッドに入りました。どうか明日も晴れますように。おやすみなさい。