almost everyday.

its a matter of taste, yeah

降伏の記録

  • 植本一子「降伏の記録」を読了。過去2作「かなわない」「家族最後の日」もそれぞれ電書で読んでいたものの感想を書き残す気にはなれず、それどころか読んだ事実すら隠しておきたい恥ずかしさのような感情さえあって、にもかかわらず作品自体は抜群におもしろいという扱いに困る作品群でした。が、ここへ来て事態は一変。3冊読んでやっと全てが繋がった、そして(暫定的な)完結を迎えた、と感じるに至りました。
  • 家庭を持ちながら他所に恋人をつくること、しんどい育児をありのままに綴ること、実母との絶縁、義弟の自殺、夫のがん発覚。次から次へと行く手を阻む苦難の連続はもはや読書体験の域を超え、著者の生活を勝手に覗き見している錯覚に陥ったことも一度や二度ではありません。その克明な記録に金銭を支払い、娯楽として消費している自分がおそろしく下世話で薄汚いという紛れもない事実に否応なく向き合わされる苦痛を以てしても、それでもページをめくる手が止まりませんでした。
  • こんなふうに貪るように活字を追うことはほぼ皆無で、自分の場合は「死の棘」にまつわる一連の作品を読んだとき以来の感覚と言えます。島尾敏雄が戦後70年の月日を経てある種の古典にも近い重厚さを湛えつつあるのに対し、植本一子は全てが現在進行形で今なお苦しみもがき続けている最中。行間に立ちのぼる気配や匂いの生々しさに限って言えば、後者がより強烈に感じられるのも当然かもしれません。読み進めるのが辛かった。なのに凄まじくおもしろかった。何なんだろうなこれ。おやすみなさい。
    降伏の記録

    降伏の記録

    家族最後の日

    家族最後の日

    かなわない

    かなわない

    死の棘 (新潮文庫)

    死の棘 (新潮文庫)

    「死の棘」日記 (新潮文庫)

    「死の棘」日記 (新潮文庫)

    狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ

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