almost everyday.

its a matter of taste, yeah

グレイテスト・ショーマン

  • 終業後、光の速さで北四番丁へ向かいグレイテスト・ショーマン。いやあ、よかった。とてもよかった。ざっくり言えば実在した人物の栄光と挫折と再生を描いたお話ということになるのだけど、105分間一秒たりとも無駄なシーンを存在させないストーリー展開がお見事でした。
  • まずは冒頭、20世紀フォックスのいつものロゴのサーチライトがスクリーンを彩るあの瞬間から切れ目なく物語が始まり、いずれ自ら完成させるステージの片鱗を見せつけてからたった1曲歌い終えるまでの間に、生い立ちから妻との馴れ初めを経て子を授かるに至るまでをきっちり軽やかに過不足なく描き出すんです。ここまでの体感時間、10分足らず。やろうと思えばこの幼年期〜青年期だけであともう1本撮れちゃいそうな気がします。密度がすごい、にもかかわらずさらりとまとめる手腕がすごい。すべての瞬間が必然でした。
  • 全編通して印象的なのはヒュー・ジャックマンのいかにも人好きしそうな笑顔で、中盤いっとき栄光や名声に目がくらみそうになるものの基本的にはあのポスター通りのニコニコぶりなんですね。物語序盤で善き父親としての顔をあらかじめ見ているこちらとしては、ペテン師然とした成り上がりっぷりも分かりやすい手のひら返しも何もかも「うん、分かってる。いずれ必ず目を覚ますのよね?」くらいの感じで見守りたくなってしまうのですよね。このへん、本当、巧いなあと思いました。予定調和の美しさというか、丹念に磨き上げられた演武を見ているかのようだった。マイケル・グレイシー監督、これが初めての作品だなんて嘘だろう?と思ったら脚本がシカゴを手がけたビル・コンドンなのですね。うわあ、納得。すごく納得。テンポのよさがとても舞台的。
  • 物語の舞台は19世紀ながら人種や性別・外見的特徴を見世物とすることで富を築いた経緯など今日にも繋がるテーマがあり、単なる伝記的夢物語にとどまらない情熱と喜びを描いているあたりが映画としての奥行きをもたらしていると感じました。歌と踊りがいちいちビシッと決まるだけでなく、時に切ない余韻を残すのもよかった。後に片腕となる演劇界のエリート・フィリップを口説き落とす場面、そのフィリップが空中ブランコの娘アンと恋する場面が特に素晴らしかったです。