almost everyday.

its a matter of taste, yeah

黙ってピアノを弾いてくれ

  • 午後、フォーラムにて「黙ってピアノを弾いてくれ」。本作の主役、いや主演と呼ぶべきかもしれないチリー・ゴンザレスをこれまでほとんど聴いたことがなく、ジャーヴィス・コッカービョークとのコラボレーションでかろうじて名前を覚えている程度だったのですが、それゆえにより大きな衝撃と驚きをもってこのドキュメンタリーを楽しめたように思います。
  • 冒頭、カメラ越しに観客をまっすぐ見据えて語り出すゴンザレス。「僕の音楽が好きなら、僕を愛するだけじゃだめだ。憎んでくれ」…こちらの困惑はすべてお見通しだと言わんばかりの露悪的な笑顔は過剰に芝居ががっていて、セピア色を帯びた粗い映像は懐かしさに近い感情を抱かせます。同じ時代を生きるミュージシャンの半生記を見に来たつもりが、過去の偉人の伝記映画の幕開けのよう。ドキュメンタリーとしてはなかなかの変化球かもしれない、とここで思わず身を乗り出しました。
  • 過去の映像やインタビューで構成される前半は少々退屈だったものの、アンダーグラウンドの大統領を宣言した際の会見映像あたりから徐々にギアが上がってきました。中盤、この会見での立ち居振る舞いを性別も年齢もバラバラな人物たちがそっくり再現してみせる試みが特に興味深かったです。「自分はいくらでもすげ替え可能なキャラクター、またはアイコンである」と示すことで逆説的に刻み込まれる強烈な個性。「本当の僕を知ってくれ」などとわかりやすく懇願するのではなく、次々と姿を変えては周囲を煙に巻く目が離せない存在。チリー・ゴンザレスが凡百のアーティストとは異なる、演出家に近い視点をも併せ持つ極めて戦略的なパフォーマーであるという事実を見せつけられました。
  • オーケストラを従えてのステージという、ある意味キテレツの極みとも言えるコラボレーションを経てピアノひとつで勝負するくだりには何かしらこう途方もない美学のようなものを感じたし、輝かしいキャリアを積んでなお愚直に初歩練習を繰り返す後ろ姿は音楽に殉じる覚悟をや誠実さを思わせました。常人にはただとっ散らかったモザイクのようにしか見えないあれこれが、彼の中では何もかも全部ひとつのゴールへと繋がっているのかもしれません。
  • オーケストラでのクラウドサーフ(!)、客席も演者もみなくすくす笑いを堪えるような表情を浮かべていたのが最高でした。楽しかったんだろうな。

  • 朝は5時起き、目指すは鳴子。7時半には滝の湯到着、近隣の宿から散歩ついでにさっと湯舟に浸かっていく観光客を除けばすこぶる静かです。寒さのせいかそれとも早朝だからなのか、お湯がとにかくめちゃくちゃ熱くてまともに肩まで浸かれないほどでした。なんだかんだで30分以上ぬるいほうの湯舟にいた気がする。ふいー、今日も温まりました。
  • 道の駅の開店時刻は8:45、ほぼぴったりに現地到着。我ながらほれぼれするほど完璧なスケジューリングです。毎年この時期楽しみにしているゆきむすびの新米を確保した後は、野菜をひととおり買ってロイズで酒のつまみを調達。これにて本日のミッションはほぼ完遂したも同然であります。さて、ここからはさらに楽しむぞ。
  • というわけで、その後は船形山のふもとまで。地域の方々が催す収穫祭にお招きいただき、おいしいものをたんまり平らげてまいりました。芋煮2種(宮城・山形)、牛と猪の焼き肉、釜で炊いた新米、彩り鮮やかなお漬け物各種、食後にはコーヒーとお菓子まで。挽き立ての豆と道具一式をお借りしてハンドドリップ体験までさせていただけたり、至れり尽くせりとはまさにこのこと。どれもこれも最高に美味しかったです。

  • この週末、夫はあいにく出張のためひとりで伺ったのですが、アルコールフリー飲料で乾杯している写真を送ってみたところ「奥さんともあろう人がノンアルだなんて…似合わない…!」と返されちょっと憤慨するなど。仕方ないべよ、車なんだもの。「来年は俺が運転するから!」だそうです。楽しみですね。おやすみなさい。