30.Who We Touch / The Charlatans
アルバム発売に先立ち公開されたリードトラック"Love Is Ending"があまりに素晴らしく、今や遅しと待ち焦がれていた新譜がついに手に入りました。それも、限定日本盤はアウトトラック13曲(！)収録DISC2つきの大判ぶるまい。豪華すぎてしあわせすぎてくらくらします。アルバム本編が期待に違わぬ出来の良さで、いまだそちらには手をつけられずにいるのですがまずはDISC1の感想から。
オープニングを飾るのは前述の"Love Is Ending"、とてもキャリア20年超のバンドとは思えない若い音にまずはわくわくさせられます。夢みるような高揚感に満ちた甘やかなストリングスが印象的な"My Foolish Pride"、乾いたアレンジにトニーさんの鍵盤が異彩を放つ"Your Pure Soul"、このメロディとこのテンポでこんな青いこと歌っちゃうのかその歳で？と思わず頬が緩んでしまう"Smash The System"、ティムさん的にはおそらく最も低いであろう音域でニヒルに決めるかと思いきやサビで予想外の展開を見せる"Intimacy"、シャーラタンズにはめずらしい掛け合いコーラスに驚かされる"Sincerity"、ここへ来て遂に伝家の宝刀が、という気にさせられる彼ららしい伸びやかなメロディが気持ちいい"Trust In Desire""When I Wonder"、晩秋の木枯らしを思わせるメランコリックな"Oh!"、ほの明るい水底をたゆたうような透明感がうつくしい"You Can Swim"から意欲的な隠しトラックへ。ああ、つい全曲書き連ねてしまいました勢いで。あらためて言いましょう。最高です。シャーラタンズ、今世紀最高傑作であります。
ライナーノーツによれば、これまでは主にティムとマークとトニーの3人で行なっていた曲作りを今回はじめて単独で持ち寄ることにしたのだそうです。にもかかわらず、相変わらず作詞作曲のクレジットが5人の連名であることがとても嬉しく感じられました。一枚岩という言葉はこのひとたちのためにあるんじゃないか、とも思う。ショーン･ライダーを帯同するというリリースツアー、ぜひとも日本にもいらしていただきたいです。今回は行きたい。どうしても行きたい。
31.雨にうたえば / monobright
夏のツアー（仙台・福島）で2回だけ聴いて、いずれも耳に残って仕方なかった中毒性ありすぎの新曲「雨にうたえば」「KISS」がようやく発売。本当、どれだけ待ったことか。タイトルチューンの「雨にうたえば」は、先に公開されたPVが曲の世界をより広げてくれる会心の出来だったのでなお期待が高まってました。序盤の抑えた四つ打ちは雨だれの音をイメージしてるんでしょうか。サビに向かってきらきらと輝きを増していくギターがすごくきれいです。しかしよくよく考えるとこれ、6分超のちょっとした大曲なんですよね。思わずじっと聴き入ってしまって、あっという間に1曲が終わる。さらに、歌詞カードに目をやるとサビのところがまるまる空白。聴けば聴くほど、これってなかなかの意欲作なんじゃなかろうか。という気がしてきます。イントロ・アウトロ独壇場のベースは、ほんのちょっとだけ自転車泥棒ぽいですね。ぐるぐるループする感じが。
「KISS」はライブで聴いたよりもエレクトロ度が増してました。やはりアンダーワールドとかダフトパンクとか、そこらへんがキーワードとして思い浮かぶ感じの音作り。なんだけど、後半わりとギターがやりたい放題でおもしろいです。「黒」はその名のとおりダークで沈んだ曲調、これがアルバム収録の「白」へどんな感じで繋がってくんでしょうか。たのしみです。それと、カバーについては少々思うところあり以下たたんどくことにします。
ええと、正直「またか」と思いました。スカ。普段からスカをやり慣れてるわけでもないのに、こうしたカバーの時にだけその方法論を都合よく持ち出して付け焼刃の独自性を持たせようと試みるのはいかがなものかと思うわけです。前回のMisirlouは初カバーということもあり目新しさが感じられたけど、こうして続けざまに同じようなアレンジだと「他に手持ちの駒はないの？」と疑わざるを得ないというか。安直だな。と思いました。ついでに言うと、今回のシングルの統一感をこの1曲が壊してるようにも思える。次はもうちょいひねってください、さもなきゃカバーはもうやめとこうよ。オリジナルたくさんあるんだし、わざわざカバーまで手を出さなくていいじゃないか。…というようなことを考えて少々もやもやさせられた次第であります。好きじゃなきゃこんなこと書かないぜ？よろしくお願いします。
