almost everyday.

its a matter of taste, yeah

花筐/HANAGATAMI

  • 朝いち、チネで花筐。3時間弱の長丁場、ひたすら濃密でありながら同時にポップでもありました。ほとばしる情熱と色彩、これが御年80歳の作品なのか…。描かれる世界と時代背景こそ違えど、若き日の自分を省みる視線にはホドロフスキーの「エンドレス・ポエトリー」に通じるものを感じます。これを撮らずに死ねるか、という執念も。
  • 冒頭から一貫して過剰なほどに幼さを強調した窪塚俊介の演技が中盤、とある台詞で伏線として回収されたその瞬間から物語世界がぐらりと揺らぎ始めたように思います。顔の彫りの深さまで含めてギリシャ彫刻のごとき肉体美を見せつける満島真之介、対を成すかのように生気を感じさせない長塚圭史、要所要所でさらりと重要なメタファーを散りばめる柄本時生。すごい。誰ひとりハイティーンに見えない。
  • 病に倒れ喀血する純白の乙女に矢作穂香。美しき義姉にして未亡人の常盤貴子。天真爛漫な学友に山崎紘菜、翳のある文学少女門脇麦。幾度となく反復されるバラの花びらと血のコントラストは、いずれ散りゆく若い命に残された限りある時間を見せつけるかのようでした。とにかく全編、どこを切り取っても一枚絵として成立するほど映像に気合が入ってた。通奏低音のようなチェロの音色とリズミカルな鼓の響きが画に統一感をもたらしていると感じました。
  • それにしても、馬を走らせ浜辺に横たわるシーン。あの恍惚とした笑みは、どう考えても完全に事後のそれとしか思えませんでした。出征する教授から託されたハーモニカで進軍ラッパの音階が奏でられる場面、その呑気な音色がやがて具現化された瞬間には鳥肌が立った。千歳がああも諦念に埋没し、年相応の執着を感じさせないのは何故なのか?という疑念がピークに達したところで密やかに明かされる想いと心からの笑顔の破壊力。他にもいろいろ書いておきたいことはあるけど、取り急ぎまずはこのへんで。