- TOHOシネマズにて人間失格 太宰治と3人の女たち。実話を基にしたフィクションとあって「※諸説あり」の断り書きを入れたくなる思い切った描写もちらほら、色鮮やかに爛れた2時間でした。「違う、そうじゃない」と激しい違和感に苛まれる場面があり「もうこれ以外はありえない」と腹落ちするドンピシャな画もあり、虚々実々のスリルが展開を追うごとに加速して片時も目が離せなかった。下世話でありながら途方もなく美しかったです。
- スクリーンを埋めつくさんとする彼岸花、伊豆の里山を彩る満開の梅、闇夜を照らす純白の藤、雨の気配を司る紫陽花。太宰に翻弄されるようでいて実のところ振り回している女たちとの時間の経過が、色とりどりの花々で印象的に表現されていました。やがて季節は秋へと移り、祭りの風車から鮮血が映える雪へと連なるビジュアル効果は絶大。妹の葬儀を終えて帰宅した喪服の美知子が泣き笑いではしゃいで見せる青い絵の具とのコントラストもお見事でした。
- それはそうと、坂口安吾as藤原竜也にヘリンボーンのベストを着せた衣装チームはたいへん良い仕事をしてくれました。ベロベロに酔った安吾と太宰の対話は観ていて息が苦しくなるほどのヒリヒリ感、女優たちとの絡みを超える生々しさに満ちていたと言えるでしょう。気鋭の作家にして大蔵省の役人、三島由紀夫as高良健吾が脈絡なく眼光鋭い潔癖者として登場するのも良かった。高良健吾はかつて「蜜のあわれ」で芥川龍之介の幽霊役を演じていた経緯もあいまって、昭和の文豪役がいよいよ板についてきた感あります。そろそろ主役を張ってほしい、できることなら川端もしくは谷崎あたりで。
- その他、ツボだったのは宴のさなかに静子と富栄が向かい合ってうどんを食べる場面。ちまちまお行儀よく食べる富栄に対し、勢いよくずずっと麺を吸い込む静子。ここに生まれながらの素直さと図太さ、そして母の強さを見ました。ああ、このひとの人生に必要ないわ太宰。と直感的に理解できた気がする。雨上がりの美知子の晴れやかな笑顔を見ながらふと思い出したのは太宰の短編「おさん」の最後の一文でした。ああ、おもしろかった。
- パルコ2を出て朝市に寄って帰る途中、駅のタクシー乗場に見覚えのある集団が。あ、これ亮君だ。マキシマムザホルモンだ。なんでまた仙台に?と思ったらきのう長町でライブだったんですね。それで明日は郡山とのこと、大丈夫なのか#9って死人が出ないか。チケット何枚出てるのかしら…あんまりみっしり入れたりしたらヘドバンすらもままならなそう。