almost everyday.

its a matter of taste, yeah

一期一会もたまになら

4日ぶりで出勤したらば、さっそくボスに泣きつかれました。誤ってパソコンの設定を変えてしまってパニックに陥り、その勢いで要らんプログラムをダウンロードしたあげく必要なファイルはことごとく消えてるという三重苦。果てしなく深いため息をひとつ、気を取り直して出来るかぎり冷静に「昨日まで、どういうふうに操作してました?」って訊いただけなのに「お、俺、やばい事はなんもしてないよ!」の一点張りとはどういうことか。いたずら発見された小学生じゃないんですから、頼むよ本当。経過はどうあれ、結局修復やらされるのはわたしなのです。そこんとこよろしく。消えたデータの再入力(だからバックアップ取れっていっつも言ってんだろうがようコラァ)から再設定までフルコースでやってみたらば余裕で半日かかりましたよ。自分、冗談抜きでこのおっさんにはうなぎ3回奢って貰ってもまだ足りないような気がします(※似たような作業をこれまで既に2回やらされてるので)。それとも自分、強気すぎますか?そんなことないよなー。

今週末には姉一家がこちらへ泊まりに来るそうなので、下見がてら近所の銭湯でひとっ風呂浴びてきました。結論。すごい場所でした。なんかもう、あまりにもつっこみ所が多すぎてどこから書けばいいのか分からんくらいに。いや、銭湯自体はいたってふつうの銭湯だったのだけど、そこへ集うメンツのキャラがあまりにも濃すぎました。正直まいった。

まずは普段の入浴と同様、顔を洗い髪を洗い身体を洗って湯船へざぶりと沈んだところで、おそらく60前後とおぼしきおばさまがもじもじと話しかけてきました。「あのう・・・、この鍵、どうやって巻けばいいんですか?」客全員に渡されてるのは、腕輪型のゴムベルト付き鍵。ここ数年は靴や服の紛失騒ぎが後をたたないのだそうで(番台にそう書いてあった)、靴箱・ロッカー兼用の鍵を必ず身につけておくように、との注意書きが壁のあちこちに張り付けられています。よく利用する健康センターと同じ形状のベルトだったため、自分はすんなりその使い方を理解できたのですが、初めての方には若干わかりづらいものだった模様。なので懇切丁寧に、きっちり教えて差し上げましたよ。「この鍵をぐるっと回して肌に当たらんようにしてから、こっちのベルトをここに差しこんで。これで大丈夫ですよ」てな感じに。そしたらおばさま、満面の笑みで「まあ親切なのね、ありがとうありがとう」と何度も頭を下げながら湯船を離れ、洗い場の方へ向かいました。ああ、自分もやろうと思えばたまにはいいことできるんだなーとちょこっと嬉しい気分になったのも束の間。話はここで終わらなかったのです。おばさまってば、ことあるごとに湯船へ近づきわたしの顔を覗き込みながら(推定距離15cm)あれこれ質問してくるのですよ。「ここには石鹸、置いてないのかしら(銭湯だから無いと思いますよ)」とか「このシャワーはどうやったらお湯が出るのかしら(頭上のレバーを手前にひねってください)」、果ては「あなたは毎日ここへ来るの?(いいや自分も初めてなんです)」「それにしちゃ詳しいわねぇ、どこに住んでるの?(いやいやそれは、ははははは)」・・・・・・なんだか少々怖くなってきたので、自分としてはまだまだ浸かりきらない気分のまま脱衣所へ向かいました。そんなこと訊かれてもなぁ・・・ううむ。

で、ここからがまた難所。身体についた水滴をふきふき、てきぱき衣服を身につけていると(ごく個人的に、風呂に入る前よりも出たあとの身体をさらす方が何倍も恥ずかしいような気がするのです。理由は自分でもよく把握しきれていないのですが)、隣でちんまり椅子にすわって湯上がり身じたくを整えているおばあちゃんが話しかけてきました。「わたしねぇ、もうそろそろ帰ろうと思うんだけど、よかったらこの椅子使わない?」こちらは暑くてそれどころじゃなく、椅子になんぞ座ろうものなら穿いたばかりのズボンが脚にはりつき大層不快な思いをするであろうことが目に見えて分かっていたため、にっこり笑って(親切にしたつもりが相手にとっては迷惑だった、という事実を悟るときの高齢者は決まってまるでこの世の終わりみたいに悲しそうな顔をするので、できるだけそれと気づかせたくなかったのです。たかだかこんなことくらいで、加害者気分に浸らされるのはご免ですよ。いやもう本当に。)「いいえ、わたしは平気ですからどうぞ」というようなことを告げました。すると彼女は「あなた、若いのにやさしいわねぇ。感心ねぇ。よかったらこれ、あげるわ」と言いながら飴玉をひと袋(かすがい『花のくちづけ』)わたしに押し付けてくるではありませんか。ひと粒、ではありません。まっさらの、封すら切ってないひと袋です。さすがに驚き「いやいやわたしは何もしてないし、こんなにたくさんいただけませんよ」と袋を押し戻そうとしたらば「いいのよいいの、持ってってちょうだい」。押し問答です。埒があかない。どうすりゃいいんだ・・・。

しかたがないのでそれを受け取り、ふたたび身支度にとりかかろうとしたところで今度は第二のおばあちゃんが話しかけてきました。「ようよう若いの(=わたしのことらしい)、この奥さん(=前述の飴玉おばあちゃん。以下、そう呼ぶ)なぁ、体重52キロあんだと。それでな、あたしは、なんぼくらいあるように見える?当ててみれ!」この方はおそらく70前後、にしてはずいぶんしゃっきりしてるし背筋も伸びてて、声だってドスが効いてます。自分は初対面の人に対して「むこうがボケならこっちは突っ込み」というような役割分担を無意識のうちに決めてしまうふしがあるので、こういうふうにいきなり高圧的な態度をとられた場合「はっ!さようでございますか」とつい腰を低くかまえがちになります。それがいいのか悪いのかを考え始めると深く落ち込んでしまいそうなのでとりあえず気づかなかったことにして、問題はこのおばあちゃん(以下、体重ばあちゃん)です。しかしなぁ、ぐるりと見渡したところこの脱衣所に体重計はないみたいだし、数値もしょせん自己申告なんだろうしなぁ・・・。あんまり重く言ったら激怒されちゃいそうな気がしないでもないし、ここはひとつ直感マイナス5キロくらいでいいだろう。というようなことを2秒くらいで一気に考えたのち「そうだなぁ、53キロくらいかしら?」と曖昧な笑みを保ったままで言ってみました。そしたら体重ばあちゃん、くわっと目をむき(この表情はあれだ、千と千尋〜のあれに似てるわ。ごめんなさい、映画見てないんで名前がわからないけどあの老婆ですよ)「んなわけねえべや!あたし、この奥さんよりもこーんなに背丈あんだよ?(おそらく10センチ差くらい)それでそんな、そんなわけあるかい!」・・・・・・怒られてしまった。それなりに気は遣ったつもりなのに、こんなひどい仕打ちって。あんまりです。それにそんなこと、言われたところでいまさら返す言葉もなく「うーん困ったな、わかんないですよ。降参降参!」とさじを投げたら体重ばあちゃん、にやりと笑って「あたしな、これでも、55キロ」。・・・・・・いったい、どう反応すればいいのですか。自慢したいのか自嘲したいのか、本気でさっぱりわからないよ。立ち尽くす自分、それに飴玉ばあちゃん(座ってますが)。向こうも言いたいことはひととおり喋り終わったのか「それじゃああたしは、もう一回〜♪」と上機嫌でふたたび洗い場へ向かって行きました。なんなのさ一体・・・。

・・・・・・で、この後も飴玉ばあちゃんはひたすら喋り続け(満州帰りだとか昔は看護婦だったとか子供は5人いるだとか、元兵隊の夫からのプロポーズは『君でなけりゃ一緒に日本に帰りたくない』だったとか、そういうことを20分くらい)、自分は夏だというのに洗い髪がひんやりしてきてリアル神田川状態になってしまったのでそろそろ帰ろうと思いながらも脱衣所内のダイドー自動販売機からボルビックを2本買い、そのうち1本を「飴のお礼ですから」と渡してみたらば彼女はまたも別の飴袋を取り出し(今度はノーブランドのクロレラ飴でした。しかし何故、そんなにいくつも飴ばかり持ち歩いてるんだろう?)半ば必死で押し戻そうとするわたしの手をかいくぐって鞄の中へそれを滑り込ませるのでした。またしても押し問答。しかたがないのでまた笑みを浮かべ、「また会いましょうね」と手をふる飴玉ばあちゃんに手を振り返しつつようやく脱衣所を後にしたのであります。

振り返ってみると面白い、けれどもこれがもし毎日だったら身がもたないやと思いながら、書きました。例えて言うなら「おとぎの国で無期懲役」って感じでしょうか。いずれも体験したことはないけれど、とにかく強烈だった、ということです。無駄に疲れた・・・もう寝ます。おやすみなさい。