almost everyday.

its a matter of taste, yeah

2009年第2回・きょう読み終えた本

02.海 / 小川洋子
海 (新潮文庫)
年明け一冊めに読んだポール・オースターがあまりに濃くてしばらくその余韻から抜け出せずにいましたが、最近いろいろ気になる文庫が出てきたのでちょっとずつ買い集めてます。この「海」は短編5作+掌編2作+インタビューという変則的な構成で、個人的には「バタフライ和文タイプ事務所」がストライクゾーンど真ん中でした。和文タイプというモチーフ、正体不明の異性との限定されたコミュニケーション、というとまず「薬指の標本」が思い浮かびますが、こちらは文章の短さもあってかより鮮明な強い読後感が残るような。エロいことからもっとも遠くかけ離れたやり方で紡がれる文章が、結果として実際の行為なんかよりもっとずっと遥かにエロく感じられる。というウルトラC的技量に圧倒されてしまい、最初の晩はその次の作品まで読み進めることができませんでした。勿体なくて。「風薫るウィーンの旅六日間」は、結末のひっくり返しかたがモーパッサンぽいなあ。とも思いました。もうすぐ春が来る、ていう今くらいのどことなくざわざわする気持ちによく合う一冊。という気がします。