almost everyday.

its a matter of taste, yeah

HINTO "WC" release ONE-MAN TOUR 2016 @仙台パークスクエア

  • というわけで、試合の後はパークスクエアへ直行。ほとんどきっかり1年ぶりのHINTOのライブ、堪能してまいりました。
  • まず、終演後に実感したこと。あの曲をやらないだけで、こうまで全体のノリが違うのか!と心底びっくりしております。以下、セットリスト等に触れるので念のためたたんでおきますね。これから見に行かれる方、いらっしゃいましたらお気をつけて(※10/3、あちこち手直しを加えました)。
  • 18:35、スターウオーズでもスーパーマンでもないこれ何だっけ?思い出せないSEとともにメンバー登場。1曲めは新譜と同じ「なつかしい人」。向かって右側、ギターの出音がいきなり最高。きらきらした高音が素晴らしくクリアに響き渡ります。安部兄さんの声の調子もばっちり。この感じだと今日のセットは新譜メインかな、と思ったそばから2曲めは「にげる」。この曲ほんとめちゃくちゃ好きで、好きで好きで大好きで、仕事で辛いことがあるたびいつも脳内で歌ってるんです。♪わたしと、どこか遠く逃げませんかー♪…ああ、もう、いかん。既に泣きそう。「デート」を挟んで序盤から「スクールホウス」を繰り出してきたのには驚きました。え、ここで?もう?そしたら今日のクライマックスってどこらへんを想定してるのでしょうか。わからん。すんごく楽しみ。
  • 本日最初のMCはここ。「仙台、4年ぶりですね」の第一声はもちろんワンマンのことを指してる、それは分かってるんだけど、去年のツーマンとかその前のアナログヒントとかセカイイチとかなかったことにされたり忘れちゃったりしてるわけじゃないですよね…?と軽く不安になりました。わかってる、けどわたし、見てないんですよ束紗さん時代を。HINTO3年生なんですよ。見たかったな、早くに知っていたかったなあ、というのは後悔とはまた違うのだけれども。それでも。
  • 続く3曲は1stから。ここまでずっと高音に押されてこもりがちだった低音が「アウン」のイントロでやっとはっきり聴こえてきました。嬉しい。そして、3曲が3曲とも、これまでのライブとは違って聴こえるような気がしたんです。具体的には、菱谷さんが違ってる。何て言ったらいいんだろう、これまでのバカテク精密機械っぷりはそのままに、ほんの少しだけ遊びの幅が広がったような。わたしは楽器ができないのでこういうところを上手く言い表せなくてもどかしいけれど、何かしらこうノリが変わった気がするんです。そんなことない?
  • それからは菱谷さんの音が気になって、しばらくずっとドラムばかりを耳で追ってました。HINTO屈指の腰にくる曲「テーブル」は特に艶めき具合が増している、何なら安部弟さんまでエロみを増してるような気がする。生で聴くのが楽しみだった「かるま」はやはり、タメの効かせ具合と小気味よいサビとのメリハリがたいそう気持ちいいです。♪さわんなボケ殺すぞ♪がよい。物騒だけどとてもよい。
  • 前述のとおり、この日は久々のワンマンということもあってかMCがよく言えばリラックスモード、裏を返せばぐっだぐだ。前日の青森が朝7時台スタートというとんでもない出番だった*1影響で、今も軽い時差ボケ状態のようです。ここらへんの事情も絡んできてるんでしょうか、今日の演奏のこの感じには。何しろ1年ぶりなので、そこのところはよく分かりません。常連さんの話が聞きたい。
  • 甘い蜜がとろけるような「マドロミオ」を経て「star」の後は、ここパークスクエアが来年3月に閉店するという話。地元民なのに、恥ずかしながら寝耳に水でありました。エビスビールを置いてる完全禁煙のライブハウスなど、ここ以外にはないというのに…!悲しいです。安部兄さん曰く「『がんばれ』って歌詞はすごいギリギリのところで書いたんだけど、だからすごく大事な曲になったんだけど、いま歌いながらパークスクエアのことがよぎってぐっと来ちゃって」だそうで、わたしも大事に聴かなきゃと思ったんでした。パークスクエアでHINTOが見られるのは多分今日で最後だけど、春までにわたしはあと何回ここに来られるんだろう。
  • 本日の丸腰ハンドマイクセットはここから、「はんぶんゾンビ」と「悪魔の実」。低い低い割れる寸前の音で髪振り乱してあのリフを引く伊東さんは何回見ても画になります。ギターヒーローだ。ひゅー!「マジックタイム」を挟んだ後は波音のSEと短いMC。「新しいアルバムができて、僕たちすんごく嬉しいんですよ。なのでここはひとつ、三三七拍子をいただいてよろしいでしょうか」という前振りを経ての「ぬきうちはなび」。ここからが今日のクライマックスでした。中盤で祭り囃子さながらの合いの手が加わる新しい展開、引き伸ばされたアウトロが素晴らしく気持ちいい。続く「風鈴」はあの新境地すぎる歌い出し*2もさることながら、ビートが速くて強くて前のめりで、にもかかわらず鬼気迫るだけじゃなくふっと力がほどける瞬間もあって、1曲の間にこんなにくるくる表情が変わるものかとびっくりしたんです。そしてもうひとつ。ああそうか、これまでだったらここに「エネミー」があったんだ。とここで初めて思い至ったのでした。「エネミー」がないとこんなに違うのか、と思った。これについては下のほうでまた書きます。
  • 新譜ではあっという間に終わってしまう短さゆえ、まだじっくりと聴き込めてない「ガラスのハート」、生で聴いたら安部弟さんがめちゃくちゃグルーヴしてる!すばらしく気持ちよくて、へなへなにやけて踊りつつ手元を凝視しておりました。本編ラストはこれも新譜と同じく「ザ・ばんど」。曰く「セカイイチが先にバンドの曲を作ってて、それが名曲なもんだから、俺は作んなくていいやって思ってたんだけど。真くん(=伊東さん)が持ってきてくれたフレーズ聴いたらね、『ああ作んなきゃ』って天啓を得まして、それで作った曲です」とのこと。ゆっくりとひとつひとつの詞をかみしめるように歌われる曲は、長い時間をかけて得られた諦めをも飲み込む緩やかな希望のように響きました。いい曲。とてもいい曲。これからはきっとこれがバンドの核になるのでしょう、きっと。
  • 楽屋に戻った時間はおそらく1分未満、あっという間にアンコール。ゆるっゆるの物販紹介、そして熱いスリッパ推し。どうやら本気で売れ行きがあやしいらしいスリッパ(1,500円)、買ってくれたらメンバー全員サインするとのことでしたが実際どれだけ売れたんでしょうね。そもそもの話として、あのスリッパがいかなるミーティングを経て採用されたのかがものすごく気になります。ふつうに考えたら、バンドのツアーグッズとしては案にすら上がらないと思う。スリッパって。
  • 長い長いMCの後は「バブルなラブ」。イントロのギターが完全に水の中の音でした。音の渦にのまれてそのまま溶けてしまいそう。最後の最後は「アットホームダンサー」、最初も最後もたっぷり長く引き伸ばされて、それが素晴らしく気持ちよくてもう最高でした。2時間に及ばんとするワンマン公演にふさわしいしめくくり。そして終盤、安部弟さんが伊東さんのところまでにじり寄って向かい合って音を重ねていくところが特に凄かったです。ギターとベースが完全に交わってた。凄まじいエロみ。硬質かつタイトな演奏、にもかかわらずおそろしく官能的。何だあれ。とんでもないぞ。すごいすごいすごい。
  • 本日のセットリストは、終演後ステージに残されたものを見て確認。そして、伊東さんの足元は想像通り、いやそれ以上にとんでもないことになってました。

  • この並び!すんごい!フロアから見る分には、安部兄さんのマイク下まで浸食してるかのようでした。境界はどこだったんだろう?
    • 01.なつかしい人
    • 02.にげる
    • 03.デート
    • 04.スクールホウス
    • 05.スーパースパイ
    • 06.アウン
    • 07.わりきれない
    • 08.花をかう
    • 09.テーブル
    • 10.かるま
    • 11.マドロミオ
    • 12.star
    • 13.はんぶんゾンビ
    • 14.悪魔の実
    • 15.マジックタイム
    • 16.ぬきうちはなび
    • 17.風鈴
    • 18.ガラスのハート
    • 19.ザ・ばんど
    • EN1.バブルなラブ
    • EN2.アットホームダンサー
  • さてと。上のほうでちょっとだけ触れましたが、この日演奏されなかった「エネミー」について。まず前提として、先述のとおり、わたしがHINTOを存在を知ったこと自体わりと最近の話なんですね。具体的な時期としては、前作NERVOUS PARTYがリリースされるほんの少し前くらい。もともとgroup_inouが好きで、何も知らずにスプリットシングルを買ったのがきっかけでした。
  • つまり、最初に触れた音源が前作で、当時から既に安部弟さんが2代目ベーシストに名を連ねていたというわけです。あれよあれよと前作にはまり、旧譜を漁って何度も聴いて、音もメンバーも違ってたことを知識としては理解したつもりでいました。それでもやっぱり、どうしたって最初のインパクトが大きすぎた。セットリストの山場には大抵いつも「エネミー」があって、それが彼らの核たる部分に違いないという認識が出来上がってしまってたんです。勝手に。
  • 既にご存知とは思いますが「エネミー」は詞も強ければ曲も強く、それゆえ生で演奏するにはかなりの集中力を要するものと素人ながらに推測しております。具体的な例を挙げるとすれば、マーズ・ヴォルタの爆発力を孕みつつルミナスオレンジのクールな無機質さを貫くような、つんのめるリズムを暴走一歩手前のところでぎりぎり堪えてるイメージ。その印象があまりに強すぎて、ともすればライブ全体の印象がここに集約されてしまうようにさえ思えた。「スクールホウス」や「はんぶんゾンビ」等、毛色の違うレパートリーを多数抱えているにもかかわらず、です。
  • そうしたバンドの象徴、あるいは背骨とも言える「エネミー」に肩を並べる重要曲として「ザ・ばんど」ができたこと、そしてこれをクライマックスに据えることで、ライブの印象が大きく変わったように感じたんでした。これまでは終盤へ向かうにつれ意識的にギアを上げてく感じだったのが、ほどよく肩の力を抜いて気負いなく演奏を楽しめているように見えるというか。地方で4年ぶりのワンマンという感慨やホーム感がもたらす影響も小さくないとは思うけれど、バンド全体のモードが柔らかくなったんじゃないかな、それは良いアルバムができたという自負によるものなんじゃないかな、と思っています。個人の意見です。

*1:にもかかわらずトップバッターではなかったらしくてもうわけがわかりません

*2:音源を聴いて「いったいどんな顔で歌ってるんだろう?」と思ってましたが、実際に近くで見たら完全に歌舞伎役者のキメ顔でした。あの顔でないとあの歌い方にはならないのだな…とやけにしっくり腑に落ちた