almost everyday.

its a matter of taste, yeah

「死の棘」日記 / 島尾敏雄

「死の棘」本編に続き、こちらも読了。いやもう、死ぬまで抜けない棘のようでした本当に。ひらがなと平易な話し言葉を多く用いてするする読める「本編」に対し、断片的な生活の記録がひたすら連綿と続く「日記」は、その読みづらさよりもまず言葉そのものの切れ味の鋭さに縮み上がる思い。推敲もへったくれもなく投げつけられたままの言葉が、その瞬間のままの痛さ苦しさ切実さでもってざくざく突き刺さってくるせいでその都度いろんなところへ思いが飛んでしまい、なかなか前に進めないんです。無間地獄だと思った、本当に。「練り上げられた創作」と「否応なしの現実」との違いをこうまであからさまに見せつけられるとは思いませんでした。やっぱり併せて読んでよかった。でも、今後しばらくの間は活字を追うのをやめとこうかと思うくらいに疲弊したのもまた事実。
それからもうひとつ、あんなふうになってしまえるのはきっと「生涯ただひとり」と信じた相手に心身すべてを委ねることのできたひとだけなのだろうな、と思いました。それはある意味ではものすごく幸せなことかもしれないし、とんでもなく恐ろしいことかもしれない。そんなわけで自分は、完全にトシオさん寄りの視点でこの2冊を読み終えました。うん、まったくもってどうでもいい話。