almost everyday.

its a matter of taste, yeah

素敵なダイナマイトスキャンダル

  • 元をたどれば「パンドラの匣(09)」、変化球なら「庭にお願い(11)」で冨永昌敬×菊地成孔のタッグにすっかり魅せられてしまった身として、前々から楽しみで仕方なかった作品。冒頭から不穏なピアノが昭和の湿り気漂う画面を覆っていて、これはたまらんと思いました。
  • 若き日の主人公の熱い思いと空回り、長いものには巻かれてみせるしたたかさ、何事もへなへな笑って受け流すデタラメぶり。こうして見るとどう考えてもダウナー系のすげーやべー奴なのだけど、ここに終始朴訥とした柄本佑のナレーションが重なると守ってあげたい愛すべきバカに思えてくるのが不思議です。あの声はずるい。かわいい。愛人との抱擁シーン、横顔上半分しか見えてないっつうかむしろメインはおっぱいなのに、あの只事ではない色気は一体何なのだ。けしからん。
  • 色気といえば尾野真千子も凄まじかった。まるでフラッシュバックのように要所要所で挿入される母パートは、とんでもない死に様を恨むどころか宿命の女を崇めるかのように美しく生々しく描かれていました。恋に狂う姿だけでなく幼子への愛にもたっぷり尺が使われているあたり、願望というよりは祈りに近いものを感じたりも。
  • 衣装やセットは当時のディテールをものすごく頑張って再現していると思うのだけれど(カタカナロゴのポカリスウェット、エレッセのロゴ入りトレーナー!)、小学生で昭和を終えた自分からすると所々に隠しきれない平成感を嗅ぎ取ってしまうところもあり。特に女性モデルたちの髪型やファッションはもう少し練りようがあったのでは、という気がしました。
  • 前田敦子演じる妻が月日を重ねるにつれ次第に小金持ちっぽくなる(すごい犬まで飼っている)のと反比例して笑顔を失っていく描写の現実感ったらなかったし、峯田演じる近松さんは親友どころか精神的支柱のようでさえあったし、松重豊の警察官はもはや和みパートでした。脇を固める面々が豪華。ショッキングピンクの御神体に柏手を打つホステスさんが可愛かったです。
  • そして、スクリーンからただならぬ存在感を放っていたのが菊地成孔as荒木経惟。登場シーン、カメラを構える姿を背後から捉えたショットだけでもう既にアラーキーでした。腰や背中に薄く柔らかくお肉が乗ってる感じとか、捲った袖口からのぞく腕だとか、サングラス越しの笑顔だとか、なんていうかもう佇まいがそのまんまそれ。とても良かったです。