almost everyday.

its a matter of taste, yeah

サントメール ある被告

  • フォーラムでサントメール ある被告セリーヌ・シアマ監督作「燃ゆる女の肖像」「秘密の森の、その向こう」を手がけたクレール・マトンが撮影監督を務めておられるとのことで、上映期間ぎりぎりのすべりこみでやっと観に行けました。
  • 法廷ものに疎く、作劇のセオリーを把握できているとは言い難い輩が予備知識ゼロで臨んだことをお含み置きの上で聞いてほしいんですけど、被告でも弁護人でも裁判官でも検察官でもなく参審員に選ばれてもいない傍聴人の来し方と内なる葛藤こそがメインテーマで「被告は本当に我が子を殺したのか?」という見出しの煽りはやや空回ってる感が否めませんでした。ありきたりな社会問題が絡まり合って火種となりやがて歯車が壊れる、という奥行きを伴った負の連鎖を想像していた身としてはその辺フワッと放り出された気がしてどうにも据わりがよくなかったし、呪術やキメラのくだりに至っては「え〜、仮にどんでん返し手前のフリだとしてもこの作風でスピるのめっちゃ悪手なんでは…?」とハラハラしました。理解できない物事にどう対峙するか、ってことなんだろうけど気になる点が色々あって没入感は得られなかったな。「母と娘」という題材がどうにもこうにもままならない層は自分が想像するよりもっとずっと多いに違いない、ということだけはこれまでとまた異なる視点から理解できたように思います。
  • サントメールならではの景観が映し出されることはほぼなく、法廷内とその近隣および主人公の生活圏で物語が進んでいくのですが、被告のアングルひとつ取ってもシーン毎に距離や角度がまるで違って、都度その目線の先にある人や物まで指し示されているように思えてかなり緊迫感があります。特に、法廷内で自説を語る検察官を見る蔑みの目があまりに冷ややかで震え上がりました。このひとの撮る画がもっと観たいです。