almost everyday.

its a matter of taste, yeah

いつかどこか誰かがひろって愛してもらえますように

  • ものすごくびっくりすることがあったんです。
  • 昼休み明け、普段どおりに電話を取ると相手はなんと古巣の取引先。今の職場ではまず関わることのないクライアント、ということはつまり、古巣で何らかのトラブルが発生したとしか考えられないわけです。
  • ここで蘇る忌まわしい記憶。それは、当時の同僚がろくな引き継ぎもなしに病休に入り、彼奴の残務が燃えに燃えてとばっちりを食らった結果、背に腹はかえられぬと覚悟を決めて死にもの狂いで場を収めるはめになったという火事場のクソ力案件です。忘れもしない、あのとき電話の向こうで半泣きになっていた相手。そのひとが半年ぶりに、わざわざ異動先にまで電話をかけてきたわけですよ。怖い。怖すぎる。何これ自分、この期に及んでまた泣きつかれるの…?と、コンマ2秒くらいの間にあらゆる記憶が脳裏を駆け巡りました。
  • しかし、相手が口にしたのは全くもって予想外の言葉でした。「例の件、ずいぶん手こずりましたがこの度ようやく日の目を見まして」「え?」「その節は大変お世話になりまして、感謝してもしきれません。あなたの在籍中に何とか話をまとめて直接お礼に伺いたいと、それを励みに話を進めてまいりましたがどうしても間に合わなくて。異動なさる旨メールを頂いたときは、本当にがっくり来ました。なのでせめて、お電話だけでも差し上げたくて」「それで、わざわざ?」「はい!」
  • 曰く。先方の話を断片的に繋ぎ合わせると、病気との兼ね合いもあってか前任者の仕事ぶりがあまりにもアレすぎたせいで、相対的にわたしの対応が特S級に見えてたらしいです。質問メールを送った後にそれを電話で念押ししても3日放置はザラだったのが、担当が変わったとたん即日返信&技術的エビデンス付きに変わったとしたら、そりゃまあこっちが救世主にも見えるのも頷けるわなーという話。ここで一応古巣の名誉のために言っておくと、わたしの対応のほうがふつうに当たり前ですからね。念のため。
  • それはそれとして、このクライアントの義理堅さときたらどうですか。これが4月くらいの話なら分かる。まだ分かる。けれど、わたしがあれこれ奔走していた最後の作業から、既に半年が経過してるわけですよ。いったいどれだけ恩義に感じてくれていたのか、と思うと何だか空恐ろしい気持ちになります。ここまで感謝されるだけのことを、それほどのサービスを、わたしは彼に提供できていたのか。本当に?
  • わからないけどわからないなりにこの場をなんとか収めなくては、わたしもわたしで今すごく嬉しいことを伝えなくては、と焦りに焦ってそれらしい言葉を引っ張り出そうと試みたものの、出てくる言葉はどれもひどく月並みなものでした。それなりに活字を読んで、それなりに映画に親しんで、折にふれ心ふるわす言葉を胸に刻んで日々を過ごしているはずなのに、こういう肝心なときに何ひとつふさわしい言葉が思い浮かばない。それをひどくもどかしいと思いました。嬉しいことを、そのままそっくり同じ質量で喜んで、それを等しく相手に伝えられるひとになりたいです。おやすみなさい。