almost everyday.

its a matter of taste, yeah

2009年第9回・さいきん読んだ本

13.オカマだけどOLやってます。完全版 / 能町みね子
オカマだけどOLやってます。完全版 (文春文庫)
ブログで連載されてる頃から読んでて、最初に書籍化されたときは気になりながらも「まあいっかブログまだ残ってるんだし」と買わずにおいたのですが*1、先日文庫になってるのを見つけてようやく購入。それも完全版とは。
生きてく上で、あるいは日々の生活を送る上で、多かれ少なかれ誰しも皆それぞれの悩みを抱えてるってのは当然のことで、その悩みを辛いと思うかそうでもないと思うかは本人にしか決められないわけで、他人がどうこう言えるものではない。ってことはこれまた当然、というよりもはやマナーや良識の領域にかかってくる話だと思うのだけれど、それでも敢えて分類するなら「三大欲求にまつわる悩み」というものの苦痛はとりわけ大きいものだろうと推察されます。眠れないとか飢えてるだとかやりたいやれないとか。それで言ったらせいどういつしょうがいの苦しみなんて想像もつかない異次元の辛さに違いないわけで、仮に自分がその只中に放り込まれたらこの世をすべてを呪いたいような気持ちにやられ恨み節のひとつも垂れ流したくなるだろう、とわたしなんかは思ってしまうのですが。いったいどうやったら、この平熱のテンションで自身の体験を書き綴れるようになるんでしょうか。まるで自分を俯瞰してその動きをたのしんでるかのような、徹底した冷静さがここにはあります。喜怒哀楽はわりと素直に描かれてるのに、自己憐憫だけは完全シャットアウト。うっかりすると自分が何の本を読んでるのか忘れちゃいそうなくらいのゆるゆるぶり、にひとりの生活者としてのプライドをみた気がしました。「私は他人の苦悩の垂れ流しに払う金なんぞ持っちゃいないよ」ていう考えを己にも課してるんだろうなあ、と。ゆえに、単純に読みものとしてのおもしろさを獲得してるんだと思います。うん、わたしもそんな金の余裕はないです。
それからもうひとつ、これは直接関係ないけどわたしは能町さんのブログを読んでたおかげでかえる目に出会うことができました。それについては感謝してもしきれないほど感謝してます。そんな能町さんの日記はこちらで。

14.パンドラの匣 / 太宰治
パンドラの匣 (新潮文庫)
こないだ映画の予告編を見て「そういえばこれまだ読んでなかったな」と購入。表題作も併録の「正義と微笑」も少年から大人になってく時期を描いた作品で、いずれも夏の暑さと爽快感とすぐ去ってしまうせつなさみたいなものを思わされました。予告編では「太宰史上もっともポップな作品」みたいなことを謳われてましたが、確かにそうかもしれません。個人的には「女生徒」「きりぎりす」あたりの女性一人称で書かれた短編がそれにあたるんじゃないかとも思うのだけれど、男子の視点からだとまた風景が違って見えるのだなあ。なんて。主人公・ひばり言うところの「かるみ」が映画でどのように描かれるのかが楽しみです。あと、川上さんが竹さんをどんなふうに演じるのか*2、菊地さんの音楽がどんなふうに絡んでくるのか、というのも興味深いなあと。

*1:それまでブログで(言い方わるいけど)タダで読めてたものをお金を出して買う、という行為に伴う割り切れなさのようなものを感じたのも事実っちゃ事実です。ここらへんの居心地のわるさ、自分の中でもうちょっと整理しておきたい。

*2:個人的にはツンデレ希望