almost everyday.

its a matter of taste, yeah

I break out in a cold sweat

あれは10年以上前のこと。
ちょうど成人式の日に、クアトロへライブを見に行きました。初めてのクアトロ、初めての海外バンドでした。あいにくその日は大雪で、晴れ着の新成人たちがこわごわ雪を踏みしめて歩く姿を今もよく覚えています。
楽しみにしていたライブは大いに盛り上がり、隣で踊っていた見知らぬひとと意気投合し「せっかくだから食事でも」ということになりました。何を食べたかはすっかり忘れてしまったけれど、お皿が空になった後もライブの余韻が醒めることはなく「なら踊りにでも」ということになりました。そのひとが連れて行ってくれたのは、雑居ビルの一室で古いソウルが延々流れるお店でした。今にして思えば、あれがわたしにとっての初クラブ体験と言えるのかもしれません。客という客がみな踊りたおしていました。わたしもそのひとも大いに飲んで踊りました。かっこいい曲がかかるたび「この曲はなに?」と聴いて教えてもらいました。コールド・スウェットもその時初めて聴いた曲のひとつです。しかしこのとき、わたしは重大な聞き違いをしていました。「コールド」を「ゴールド」と間違えて覚えてしまい、以後数年間にわたりその誤りに気付かないまま過ごしていたのです。
…という古い記憶が突然思い出されたのは、きょう見た映画「ソウル・パワー」の劇中でJBがまさにその曲を歌い始めた瞬間でした。映画の中でもクライマックスたるその瞬間、まばゆいばかりのライトを浴びて歌い踊るJBの顔は、ぎらぎら光る汗にまみれて輝いていました。ああ、あれは聞き間違いなんかじゃなかった。ほんとにゴールド・スウェットじゃないか!とひとり快哉を叫びたい気持ちになったのですよ、という話。かっこよかったな、JB。身体のキレが半端じゃなかったです。
他にはミリアム・マケバのクリックソングとBBキングの指づかいに圧倒されました。超絶技巧。それとアリのすさまじい甘党ぶりにも驚かされました。コーヒーに砂糖、いったいどんだけ入れれば気が済むのかと。ビッグマウスもただ尊大なだけじゃなく、スーパースターゆえの宿命みたいなものを感じさせられ興味深かったです。JBは最後の最後の瞬間まで格好よかったよ。
そうそう、雪の夜の話にはちょっとした続きがありまして。結局明け方まで踊りたおした後でそのひとは静かにこんなことを言いました。「あんたの喋りかた、大好き。あたしもそっちで育ったのよ。もう帰れないけどね。」それ以後、そのひととは一度も会っていません。今も元気でいるかしら?だったらいいな。おやすみなさい。