almost everyday.

its a matter of taste, yeah

2010年第18回・さいきん買ったCD

48.STAn / STAn
STAn
STAnのことを知ったのはつい最近です。
それも、大きな声では言えないけれど最初の出会いはブックオフでした。ああごめんなさい。先日リリースされたばかりの新譜と何ら変わらぬいきおいでそのシングルをがんがん聴きたおしてる昨今、非常に申し訳ない気持ちでいます。そこへもってきて自分の場合、あの手の店では250円以下の棚を主戦場としているためになお罪悪感がつのるという負のスパイラル。
さらにもうひとつ付け加えるなら、そういうところで彼らの盤を見つけたのは今のところ後にも先にも一度きりで「STAN?ああ確かmonobrightと対バンしてるひとたちだよなー9曲入りかー太っ腹だなー」くらいの気楽さでもって何気なくレジへ向かったんでした。聴いたら聴いたで"THE FIRE"のバカみたいに格好いいリフに圧倒されながらも「マジ寒くない?」「STANマジヤバい」等のチャラい詞ばかりがやたら耳につき、音はいいのにうーん残念ビッグマウスな男はやだよと聴く気を一気に削がれてしまってそれっきりだったんでした。
そのまましばらく彼らのことは思い出さずに夏が終わり、しばらく経ってたまたまシャッフルで"THE SONG"がかかったときにいきなりがらりと印象が変わったんです。というか、まったく違うバンドだと思った。これ誰だっけ?とディスプレイを見て彼らの曲だと気づいたときの驚きったらなかったよ。そして、そこで初めてある疑念がわいてきたんでした。ひょっとして、このひとたちはめちゃくちゃ正直で誠実で、そのうえずいぶん要領がわるいんじゃないか?という疑念が。
チャラいことしか言わないひとを信用できないのはまあ当然として、真っ当なことしか言わないひともそれはそれで嘘くさいよな。とわたしはときどき思うのですが。大人たるもの、自らの発言に一貫性と責任を持つべし。と思わないこともないし、事実そういう姿勢を求められる機会は歳を重ねるごとに増える一方だったりします。そうは言っても、気分やコンディションの波ってものは誰にだってあるのですよね。そういう意味合いにおいて、彼らはとても正直だなあと思います。
思わずはっとさせられるほど真っ当な詞を力強く叫んだかと思えば、どうしようもなくチャラい詞を気だるく吐き捨てることもある。その矛盾を取り繕おうとしない。辻褄あわせをハナから放棄してるだけと考えられないこともないけど、これって要はコインの裏表に過ぎないのではないか。真っ当な詞はそのとき心底歌いたくてたまらなかったことで、チャラい詞はそういう題材が特に思い浮かばなかったときのありあわせというか、いわば日常会話の延長みたいなものなんじゃないか。おそらくはこの「真っ当」と「チャラさ」の落差こそが彼らの個性であり強みであると同時に弱点なのであって、チャラいとこがへんに悪目立ちするばかりに聴き手の間口を狭めてる感が否めないのが何とも歯がゆいなあと。あのとんでもなく格好いい音と人なつこいメロディを既に兼ね備えてることを思えば、狙いと戦略さえハマればあっさり売れてしまいそうなのになあ。そこまでして売れなくてもいいとか思ってそうだもんなあ。何故ってこのひと、嘘つけなさそうだもの。その時に歌いたい事しか歌わなそうだもの。ああなんて愛すべきひと。
聴き手を多少選ぶとしても、届くひとには確実に届く。場合によっては見える景色や未来をがらりと塗り替えてしまいかねない。そして、今のところそれを知る人はあまり多くない。というこの状況が、まだ5人編成だったころのフィッシュマンズと重なるように思えるんですがそんなことはありませんかね?ひとまず旧譜も聴いてみます。まだ聴いたことのない曲がたくさんあるという喜び。こんなことはそう多くないよ。