almost everyday.

its a matter of taste, yeah

2011年第5回・さいきん買ったCD

07.apartopology / APARTMENT
apartopology
ほんとうに、心底、もうずっとずっと長いこと待っていました。編集盤やリミクス盤を除けば、実に約6年ぶり(!)のリリースです。それでなくても長い長いインターバルが地震がらみの個人的理由で更に引き延ばされた結果、血に飢えた吸血鬼のごとき飢餓感と破裂寸前までにふくらみきった期待、という暑苦しいアンビバレンツに苛まれたままこの盤に臨むことになってしまいました。はっきり、妙なテンションでした。
APARTMENTさんの音楽を、歌声を、一度でも聴いたことのある方ならばきっと頷いていただけると思うのですが、彼から発せられる音にはそうした熱や生々しさや重たさというものがあまり感じられません。だからといって、冷めているとか枯れているとか軽いとかいうのでもありません。鳴らしたい音を鳴らしたいように鳴らしたいだけ、さも簡単そうにかろやかに、しかし丁寧に注意深く鳴らしている。ということがいつでもきちんと伝わってきます。わたしには。その変わらなさに、その過不足のなさに、深く深く安堵しました。そして、ゆっくりと気持ちが満たされていくのがわかりました。それがとてもうれしかった。「とてもうれしい」だなんて言葉じゃまったく言い足りないほどに、つよく大きく穏やかな気持ちで。
具体的に言うとまず、時期を異にしてそれぞれMyspaceで公開された音源がどれも収録されていたことにほっとしました。にぎやかなリズムとオリエンタルなギターの対比が楽しい"Catjes"、2コーラスめでサビを一緒に歌えてしまう"Fry"、一度聴いたら忘れられない半音上がるメロディの"Je"、どれもそのつどくりかえし聴いていたからか、CDで聴いたときの感慨もひとしおでした。
また、そのような予備知識なしに初めて聴いた曲もやっぱり、とても良いです。アルバム冒頭を飾る"Pomroccollective"は身体が自然に動いてしまう極上ポップ、本作の中では割と早い段階で書かれたという"APCD"はサビのピアノが耳に残って離れず、"Save"はいつになく気だるいダークな曲調にどきっとさせられます。中でも特に驚かされたのは"Golden Mellow Morning"でした。こんなふうに歌うこともできちゃうんですね、アパ様。びっくりしました。終盤、しれっと入り込んでくるリコーダーのメロディにも思わず頬がゆるみます。
それにしても。年を重ねる毎に強くなるのは「音楽との出会いってのはつくづく一期一会だな」という思いです。あるとき不意に耳にした曲を気に入って、作者を調べて音源を手に入れる。何度も何度も聴き返す。その音源がますます好きになる。ここまでは、いつもきわめて幸せなのです。ただ、次の音源でも同じことが繰り返されるとは限りません。作者の指向や音作りががらりと変わることもあれば、自分の耳や気分が変わることもあります。自分が期待していた音と違った、という理由で勝手に失望することだってあります。だからこそ、こういうときは何だか奇跡が起こったような気持ちにさえさせられてしまうんです。APARTMENTさんの曲を初めて聴いたのはもう8年くらい前のことで、それからずっと新しい音源が出るたび、毎回ほとんど同じことを思っています。それってちょっとすごいことだと思う。