almost everyday.

its a matter of taste, yeah

氷の花火

  • 9時、チネで「氷の花火 山口小夜子」。遺品を乗せたトラックが首都高から母校へと走るイントロダクションを経て、おびただしい数の服が若い後輩達の手で息を吹き返していく過程と、生前親交の深かったクリエイターらへのインタビューが交錯するドキュメンタリー。長らく専属契約を結んでいた資生堂のCMやパリコレの映像も数多く使用されており、ただただ息をつめて見とれるばかりでした。
  • 「パリにかぐや姫が舞い降りた」と語り継がれるデビューの衝撃、世界中のあらゆるデザイナーの寵愛を受けた絶頂期、資生堂山本寛斎との蜜月に終止符を打ち舞台や身体表現に可能性を見出した転換期、それらすべての経験を血肉として10年ぶりにパリコレに復帰した円熟期、若きクリエイター達と親交を深めた晩年、そして没後なお彼女を慕う人々とその活躍を知らない若い才能による新たなプロジェクト。市松人形のように可憐で儚げな日本人女性が、触れるものすべてを吸収してパワフルな表現者になっていく。にもかかわらず、その印象がずっと慎み深くたおやかで何ひとつ変わらないように見えるのがとても不思議でした。とてもとても美しいひと。ずっと目で追っていたいくらいに。
  • 話は変わって、太宰治に「雪の夜の話」という掌編があります。時は昭和19年、登場人物は売れない小説家の兄と出産を控えた兄嫁、その夫婦宅に身を寄せる妹。あるとき兄は妹に「人間の眼玉は、風景をたくわえる事が出来る」と口から出まかせを言います。それで妹は、美しい子を産みたいと願う兄嫁のもとへ、めずらしい東京の雪景色をこれでもかと目に焼きつけて帰り、わたしの目を見てとねだるという話。初出が少女向け雑誌ということもあり半ばギャグのようなおかしみのある軽い文体ながらも何故だか妙に印象的で、さきの映画を見終えた後にふとこの話を思い出したんでした。ダメな兄のホラ話でも信じたい、兄嫁の役に立ちたい、綺麗な雪景色を見て喜ばせたい。そういう澄んだ心の少女が、あのひとの中にずっと生きてたような、そういう気がする。枯れないままでするりとこの世を去ってしまったところまで含めて。
  • そうそう。深い余韻をかみしめながらエンドロールを眺めていたら、最後の最後に春風亭昇太師匠のお名前が出てきてえええ?何それ!とびっくりしました。後でいろいろ調べてみたら、松本貴子監督と師匠が大学の先輩後輩というご縁があってのことなのだとか。ほえー。

  • その後は夫と待ち合わせて散歩。素晴らしく良い天気です。お目当てのパン屋さんが完売御礼で既に閉店してしまっていたため、気を取り直して近くのラーメン屋さんへ。レモンたっぷりのさわやかすぎる塩ラーメン、食べてる間じゅうずっと頭の中でWaterfallが流れてました。ああ、美味しかった。これ、夏バテしんどい時に食べたらきっと五臓六腑に沁み渡るんだろうな。帰宅後はauのキャンペーンにて手に入れたローソンのプレミアムロールケーキでお茶。このところ、休日のわが家はよく食べよく歩いてよく眠ることにしています。うーん健康的。おやすみなさい。