almost everyday.

its a matter of taste, yeah

眠らないでお願い

明け方に見た怖い夢。できることなら残らず獏に食べてもらいたいです。もぐもぐ。
家に5人の客がやってくる。3人は男、2人は女。つり目で眼鏡で髭を生やした細身の男、だらしなく太った色白の男、中肉中背の影の薄い男。女は二人ともゴージャスな化粧をしている。
細身の男が夫に言う。「あなたは病気なんです。それもとても重い」「今すぐ入院しなくては」「一刻も早い手術が必要なんです」「仕事のことは心配しないで、ああそれから費用のことも」「さあ私たちと一緒に、すぐに」
夫は半信半疑ながらもなぜか素直に「それなら行かなきゃ」「支度してくるね」と荷物をまとめに行く。
「ちょっと待ってください」わたしはようやく口に出す。「病気ってなんなんですか」「いつからですか」「それを何故あなた方がご存じなんですか」「入院ってどうして」「費用を何故、あなた方が」
細身の男が、蛇のように舌なめずりしてこう返す。「なんの病気って、それはあなたが一番よくご存じでしょう」「ここまで悪化させたのは他でもないあなたですから」「とにかく、あの方はわたしたちに任せてください。いずれ元気な姿をご覧に入れますよ」
気が付くと、後ろの4人も細身の男と同じ表情を浮かべている。獲物を追いつめた蛇が、狙いを定めるその瞬間のような。わたしは震えて声を発することができない。(病気?悪化?わたしのせい?任せる?こいつらに?)
そのとき夫が、信じられないくらいのんびりした声で話しかけてくる。「ねえ、タオルって何枚くらい必要だと思う?」我に返ってわたしは夫に向き直る。「ねえ、病気なんて嘘でしょう?今までどこも悪いところなんてなかったじゃない」「うん」「ならどうして」「だって、仕事もお金も心配しなくていいんでしょう?だったらちょっと遊びに行くみたいで楽しそうじゃない」「バカ!あんな胡散臭い話、信じられるわけないでしょう。言われたまんまホイホイ入院したらきっと、知らない間に臓器取られて売り飛ばされたりしちゃうよ絶対そうに決まってる」「そんなあ。心配しすぎだって」「どうしてわかんないの?」「いやほら、実際ほんとかもしれないでしょう?」「何が?」「俺が病気だっていうの」
「胡散臭いって、それは聞き捨てなりませんね」と色白の男が太った身体を滑り込ませる。「うるさい、黙れ」わたしは嗄れた声でやっとそう言う。「今、なんと?」細身の男が目をつり上げる。「黙れ、うるさい」わたしはもういちど言う。「だいたい、この部屋に上がっていいなんてひと言も言ってない。今すぐ出てって。入院なんて絶対させない」細身の男と睨み合う。額と額をくっつけて、ありったけの力をこめて。細身の男がまばたきをしたその瞬間、わたしはそのギラついた額に力いっぱい頭突きする。男が吹っ飛ぶ。女たちが悲鳴をあげる。「死ね!」と口々に叫びながら、玄関に置いてあるものを手当たり次第に投げつけてくる。靴、靴磨き、鍵、置物。それと女のくわえていた煙草。部屋の中に火が上がる。わたしは嗄れてよく通らない叫び声を上げる。
…そしたら、自分の叫び声で目を覚ましました。夢の中で聞いたのと同じ、スリムクラブのひとみたいな声でした。これって何かの暗示なのかしらね。だとしたらごめんよ夫。おやすみなさい。