almost everyday.

its a matter of taste, yeah

バジュランギおじさんと、小さな迷子

  • チネでバジュランギおじさんと、小さな迷子。長い。ベタ。でもそこがいい。インド映画に求めるすべてがここにありました。
  • 話をざっくりおさらいするなら、掛け値なしのバカにして超がつくほどの正直者であるところの主人公が、たまたま拾った口のきけないとびきりキュートな幼女の迷子を何とか親元に返そうと奮闘する話。がしかし、ふたりは国籍も違えば信じる神も食習慣も異なることが後に判明。最初はただの善意だった親探しが、あれよあれよと国境を挟んだ大騒動に加速していく…というもの。すべては幼女の「口がきけない」という設定がミソなんですが、これを機能させるための数々の仕掛けがいちいち効いてて見飽きることがありませんでした。いかにもインド映画らしい間延び感や執拗に長い演出はそこかしこに散りばめられているものの、むしろそれが味になってる。このまま何時間でも観てられそうなのどかさと色鮮やかさが心地よかったです。
  • まずは冒頭、幼女ことシャヒーダーの村の雄大な景色と人々の暮らしぶり、彼女を見失った母親の悲痛な叫びをこれでもかと見せつけた直後、主人公パワンが登場するシーン。いきなりテンションマックスのミュージカル。神を崇め祈りを捧げる極彩色のパレード、ついでにセルフィーも撮っとく?みたいな感じの現代らしさは映像だけでなく音づくりにも表れていて、いかにもインドっぽい旋律の端々にEDM的なアレンジが施されているのが新鮮でした。こちらはてっきりバーフバリ的伝統のあの感じが今なおインドの主流とばかり思ってたけど「あ、実際はこうなんだ?」という実感がここで初めて得られたというか。わたしと同じiPhone握って屋台でごはん食べて踊って、その一方で家同士のお見合い習慣や「男子たるもの嫁を娶るには家を建てよ」みたいな価値観がゴリゴリに残ってたりするんだなあ、それでもって幼女側では今なお自給自足に近い生活が続いてたりもするんだなあ、と。
  • うさんくさげなパキスタン人ジャーナリストが旅の仲間に加わった時点でオチは読めたも同然ながら、偶然と必然によって正しい場所へと導かれる展開はまさしく神の思し召し。国の対立、体制側の大義名分など様々な壁が立ちはだかるとは言え、ここでは誰もが自らの正義に忠実に立ち動いているだけです。根っからの悪者がひとりも登場しない世界はとても優しかった。欲を言わせてもらえるとしたら、エンドロールは国境を挟んだ全員で歌い踊ってほしかったです。満面の笑顔で。