- チネでバーナデット ママは行方不明。最高傑作との呼び声高いTARの予告編を目にするたび「わたしが観たいのは最高にクールで愉快でブッ飛んでるスパークスのMVのブランシェット様なのにいいいい!」と臍を噛んでおりましたゆえ、ドンピシャそっちへ舵を切ったと思われるこのキービジュアルと「監督・脚本:リチャード・リンクレイター」のクレジットに全幅の信頼を寄せつつ劇場へと足を運びました。結論、さすがの仕上がり。大満足。
- 仲良し母娘と理解ある夫の3人家族、娘の進学先も決まってこの先順風満帆かと思いきや大小様々な困難が立ちはだかるわけなんですけど、絶対的な悪役を据えることなく個々のキャラクターを「誰だって何かしら脛の傷のひとつやふたつ抱えてますでしょ?」とでも言いたげに人間味たっぷりの描きかたをしてる辺りからもうね、間違いないなって感じです。かつて激しく罵り合った二人が腹を割って話すシーン、クライマックスにはまだ遠いにもかかわらずほろりとさせられてしまったじゃないか。
- 主人公の思考回路はまさに天才のそれというか、常人には到底追いつけそうにない圧倒的跳躍力とスピードでもってあらゆる問題を手当たり次第になぎ倒していくものですから「ちょっと何考えてるか分からない」「頭の中どうなってんの?」と同時に「いくらなんでもそう何もかもトントン拍子に上手く行くはずねえだろ」とツッコミのひとつも入れたくなるんですけど、こういうところがすごく巧いんですよねこの監督。説明的なセリフまみれになりそうなところで二つの場面を反復させるとか、もう、分かってるのに「これこれ〜!」と膝を打ちたくなってしまう。テンポの良さが謎のグルーヴを呼び「よく分からんのに何故だかスッと腑に落ちる」みたいな瞬間がたまらなく気持ちよかったです。あとはそうね、夫の勤め先がMicrosoftで妻のラップトップはアップルってあたりがいかにも芸術家っぽさ醸し出してるわ〜なんてことを思ったりしました。緊急事態に分けてもらったクリスマス柄のダサい部屋着で気分よく酔っ払っちゃうとか、そういう小ネタもすごく好き。