- フォーラムでエストニアの聖なるカンフーマスター。2年ほど前に観たノベンバーの監督と製作陣による新作ということで、どうしても確認したいことがありここ仙台での公開初日に馳せ参じました。何が気になってたかというと、ああいう感じのダークで耽美なファンタジーで世に出た監督であることは間違いないんだけどあなた、隙あらばちょいちょい観客を笑かしに来る芸風ですよね?そこへもって来てこの2作め、キービジュアルも邦題もそっちの匂いが濃厚ってかもう見るからにあからさますぎて、前作が売れたご祝儀的な意味合いでもってスポンサーがついてはっちゃけちゃったんじゃないのおおお?としか思えませんでした。結論から言ってしまえば、それで大体合ってそう。
- 特段の信仰を持たないごく一般的な日本人であるところのわたくしめからすると、陽気でパワフルなゴスペルに揺れるあの手の教会とは明らかに様子が異なる黒ずくめ&髑髏だらけの修道院はいかにもブラック・サバス的ビジュアルとの親和性が高そうだし、旧ソ連占領下の70年代エストニアという舞台が心の拠り所的デカめのテーマとして機能してるのもわかる。けど、最初から最後まで画も音も演出もすべてがどうかしてる。ひたすら自由に宙を舞ったりキレたり暴走したりする物語をニュートラルポジションに戻す役割を担ってるのがサバスのリフであり厳かな讃美歌でもあるんだけど、当時の技術に最大限の敬意を払っているであろう画質やVFXやコマ送りの質感もあいまってじわじわ効いてくる珍味のような味わいを醸し出してます。壊れても壊れても壊れない真っ赤な車とグニャグニャのエンドロールがとりわけ印象的でした。今後の人生、The Wizardを耳にするたび本作を思い出す呪いが解ける気がしないです。