almost everyday.

its a matter of taste, yeah

エンパイア・オブ・ライト

  • 午後、TOHOシネマズでエンパイア・オブ・ライト。台詞でストーリーを先導する作風ではないため観た人の数だけ解釈が分かれそうではあるし、舞台が約40年前のイギリスという点を鑑みても突っ込みどころがないとは言えないけれど、終映後はもろもろひっくるめてじんわりと清々しい気持ちに満たされました。春の訪れとも重なる暖かな余韻が心地よいです。
  • 冒頭、雪道を歩いて映画館へと出勤するヒラリーの日々の営みは無駄がなく実直で、年齢と経験を重ねたベテランそのものに見えます。何らかの病を患っていることは分かるものの、同僚との仲も良好だし慣れない社交ダンスに興じる行動力もあるし、見たとこ総じてまずまず上出来な中年女の日常って気がしたんですよね。職場でやたらとサカってる点さえ除けば。
  • 支配人の誘いを断れないのは単に相手がボスで逆らえないからよなあと思ってましたが、新入りの若えのに求められるまま職場ですぐさま致しちゃうってかそもそも新入りめっちゃストライクゾーン広いのな…?っつう点に若干もにょらないこともなかったんですけど、それもこれもあれもぜーんぶ元を辿れば過去の痛手のせいでした、ってのは思わせぶりな演出のわりにド直球よね。この辺もうちょい込み入った偶然や意表を突く展開があるのかと思いながら観てました。持って生まれた属性や年齢が違う相手とも心を通わせ合うことは起こりうる、どんな悲劇に巻き込まれても躓いて立ち上がれなくなっても春は必ずやってくる、というようなことを描きたかったのかなと思いました。
  • 映写技師のターンは先月観てきたばかりの「エンドロールのつづき」とほぼ全くおんなじで、作り手が映画そのものについて描くときにどうしても外せないコアの部分がここなんだろうな、との想像が半ば確信へと変わりました。もぎりの描写やポップコーン、六角形に飛び出たチケット売場など細部が丁寧に描かれている辺り、あちらを映画≠フィルムへの愛とするならこちらはそれを映し出す場所≠劇場への愛。いずれも既にほぼ失われてしまったものや場所への憧憬を強く感じます。「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」でもいい味出してたトビー・ジョーンズがこれまたいい役なんですよ。同僚役、それぞれみんなキャラが立っててちょいちょい展開に絡んでくるし、中高年男性の嫌なところを煮しめたような支配人にコリン・ファース*1を充てるとはなんと贅沢な…!と唸るなどした次第であります。他にもあれば、また後で。

*1:帰らない日曜日」では夫婦役だったというのに…!