almost everyday.

its a matter of taste, yeah

アアルト

  • 午後、チネでアアルト。同劇場にてちょいちょい見かける予告編やフライヤーがみんな大好き北欧デザインのすっきり整った美と静けさに満ちてたもんで、ずいぶん前から秋の訪れを心待ちにしておりました。で、いざ観てみたら想像したものとは少し、いやだいぶ異なっていて大いに驚かされたのでした。
  • フライヤーをみる限り、デザインの根源とされる逸話や妻との関係を紐解いていくタイプの家族愛寄りドキュメンタリーを想像するわけなんですけど、なんて言うかもっとこう、北欧ならではの静謐さの奥に宿る情熱や奔放さみたいなものをひしひしと感じたんですよね。アアルト本人が人好きのするモテ体質だったというお盛んぶりはもとより、妻との手紙のやりとりも実にナチュラルかつ直截。さらに、それを受けて立つ妻・アイノの返しが知的でユーモアも散りばめてあって、ふたりの知力と力関係が拮抗していたであろうことがわかるんです。戦前に、こんなハイスペ夫婦が実在したんですか…?とだいぶ序盤のほうで頭がクラクラしてきました。びっくりしちゃう!
  • もうひとつ印象的だったのは音楽。この手のドキュメンタリーにおける音楽ってわりと映像に寄り添う感じというか、端的に言って効果音以上でもそれ以下でもないことも多い気がするんですけど、本作めっちゃ主張してくるんですよ音楽が。あるときは小気味よいジャズ風ドラムソロで軽快に、またあるときはどデカい建造物の重厚さを5割増にしてやろうか?的な意図すら感じるぶっといチェロ。こうした音楽と無音、鳥のさえずりや風といった自然音、さらにはインタビュー音源のざらついたノイズまでもがおそらく緻密な計算に基づいて配置されているため、最新のドローン映像と古い関連映像がもたらすドライブ感との対比もあいまってめちゃくちゃ神経が研ぎ澄まされるのを感じました。スリリング!