almost everyday.

its a matter of taste, yeah

タヒチにっきその6

 
7時30分頃起床。ベッドから出るか出ないかのすばらしいタイミングで電話がかかってきました。何事かと軽くどきどきしましたが、その内容はきのう頼んでおいた朝食の飲み物を何にするかの確認のみだったらしく「コーヒープリーズ」のひと言にてあっさり終了。ほどなくして運ばれてきたその食事は、想像を遥かに越えた贅沢なものでした。二段重ねの銀の器にたまご料理が2種類、かご盛りのパン、バター・ジャム各種、コーヒーにホットミルク、パインジュース、フルーツサラダ。これらが白いテーブルクロスを敷いたワゴンに載ってしずしずとやってきた日にはもう、いきなり眠気も吹っ飛ぶというものです。その華麗な朝食をワゴンごとテラスへ移動させ、手すりを越えてやってくる鳥にパンくずを放り投げつつ、銀のフォークで卵をつつく。などというのはきっとこれが最初で最後だろうなぁとまるで夢が覚めないみたいに、ひたすらぼんやりしたまま朝のひとときをすごしました。ちなみにこれは一人前。きのうマーケットで買ってきたパンが余っていたので、二人ぶんはきっと多すぎるだろうと考えたのです。めずらしく予想が的中しました。が、それでもじゅうぶんすぎるくらいに満腹です。甘美なる朝寝の誘惑に抗えずよろよろとベッドへ逆戻り、相方はカメラを抱えて外へ散歩に出かけていきました。しばしの間、おやすみなさい。それから結局2時間あまりも寝てしまったようで、目覚めたときには我ながらおどろきました。堕落のきわみだ。その間、相方はカメラ片手にビーチへ散歩へ出ていたらしく、後で見てみたらネコといっしょに撮った写真がいくつか収められてました。この子はどうやらホテル敷地内に住み着いているらしいです。えらく人なつこいので、後から着いていったわたしもまねしてちょっとだけナデナデ。草むらに入ったらあっという間に靴がオナモミだらけになりました。ちくちくして痛い。日本と同じものなんでしょうか。

ビーチを抜けて水上コテージまで続く桟橋から水面を覗くと、ボラボラで見たのと同じ青い魚がひらひら泳いでいるのが見えました。それを見るなり再び海に入りたくなったらしい相方は走って部屋まで戻り、ものの5分で再度登場(海パンで)。シュノーケルがしたいというので、腕時計だけ預かってビーチでゆるっと待つことにしました。今日は午後から歩きたおす予定なので、わたしは体力温存に専念するということで。ビーチチェアに腰かけてぼんやり辺りを眺めていたら、親切なセキュリティ氏がバスタオルとクッションを持ってきてくれました。ロイヤルブルーの、いかにもリゾート地らしい上品なバスタオル。ふかふかで気持ちいいです。
そのままお昼すぎくらいまで過ごした後、部屋に戻って街へ出る支度を。13時すぎには迎えのワゴンに乗り込みました。ドライバー兼ガイドのHさんはこちらへ来て1年半ほどの日本人男性で、親切かつクールなナイスガイ。次のホテルまでは他にお客がいなかったので、ぽつぽつとタヒチ裏話を聞かせていただきました。「物価が高いんですよ」とか「とりあえずは英語で何とかなる国ですね」とか。選んだ先がなぜタヒチだったのか、という辺りがなかなかおもしろかったです。波乱と静けさに満ちた人生。かっこいい。
ほどなくして、タヒチ島でいちばん大きな市街地・パペーテに到着。港からすぐ近くの免税店前で解散し、その後は各自自由行動です。まずはマルシェと呼ばれる公共市場へ。バレーボールのコートが2面とれる体育館くらいの大きな建物の中めいっぱいに、色とりどりのモールが飾られてます。すごい迫力。圧倒されるわー。入ってすぐのところは花や果物や木彫りの置物等、奥へ進むと肉や魚や総菜などがどれも所狭しと並んでおり、場内を歩き回るうち次第にお腹がすいてきたのでまずは腹ごしらえを。はちみつがけのワッフルと四角いピザをひとつずつ買い、店の外へ出てわしわしっとかぶりつきました。いずれも焼きたて、外はさくさくで中はもちもちしてます。うまーい。食べ終えたところでふたたび店内へ戻り、見たとこおそらくここ何年かは動いていないであろうエスカレーターを登って2階へ。こちらはパレオや民芸品などお土産メインの品揃えなので、あちこち歩いて親しいひとたちへのお土産をがっつり買い込みました。ヒナノグッズ売場のお姉さんが380CPFまけてくれた上、ぎゅっとハグまでしてくれたのがうれしい。観光客向けサービスの一環なのかもしれないけれど、それを差し引いても笑顔が無防備、かつまぶしいです。あ、それとボラボラでマッサージしてもらったときのボディオイルもここで発見できました。興奮してミニボトルセットをまとめ買い。わーい。
  

予定していた買い物がひと段落ついたので、マルシェを出て街の中心部へ。バーガーショップでペリエを買い、ごくごく飲みながら歩きます。だんだん日差しが強くなってきたせいか、たくさん飲んでもすぐに喉がかわいてしまう気が。ノートルダム寺院は工事中らしく幕がかけられており、その全貌を見ることは叶わず。残念。その後も街の中をくるくる歩き回るも、16時をまわったせいか既に店じまいしてしまったらしいところがちらほらと。ブーガンヴィル公園で遊具や像を眺めながらひと休みしました。そろそろ日が落ちてきてます。集合場所の免税店前へ移動し、そこから車で港のほうへ。これからルロットツアーへ向かいます。

ルロットとは、トラックタイプの大型車を使った屋台形式の飲食店。日本でも夏のフェス等でケバブやカレーの屋台をよく見かけるようになりましたが、あんな感じのお店がずらりと30店ばかし並んでるようなものと考えればイメージが湧くのではないでしょうか。メニューも豊富で、ステーキ中華イタリアンにスイーツとどこへ行こうか悩んでしまうほどです。まずは目に付いたピザ屋へ入り、ミネラルウォーターとベジタリアンサラダを注文。こちらへ着いてからまともな野菜を食べていなかったので、他のお客さんが食べてる生野菜を見ていたらいてもたってもいられなくなったのです。レタスにトマト、コーン、オリーブがたっぷりのった大皿に血圧を上昇させつつ、喜びいさんでむさぼり食べました。ピザ屋に入ったのにピ肝心のピザを食べないってのもどうなんだ、とは思いながらも次の店へ。

次に向かった先は中華屋さん。悩んだあげくに鶏肉と野菜の炒め物を注文しました。やわらかい鶏肉の他にセロリ、白菜、玉ねぎ、ピーマン、ブロッコリ、チンゲン菜、もやし、しょうが等これでもかと野菜が入っており、これまたあっという間に完食。ちなみに、ここではどのお店も席についてオーダーしたらまずひと口サイズのバゲットが1/5本ぶんくらい自動的にサーブされるようです。日本で言うところのお冷と同じ感覚で、ごく自然にバゲットが出てきます。ついでに言うと、水は買わないかぎり出てきません。おもしろいなー。で、前述の中華炒めにももちろんバゲット。残ったたれを香ばしいバゲットにからめて食べるという行為にはどうしても違和感がつきまといますが、やってみると意外においしいので更に複雑な気分になります。でもまあ、考えてみればこの国のバゲットはどこで食べてもことごとくおいしいのだし、この炒め物だってかなりいい感じなのだし、合わせたところでまずくなろうはずもないわけで。お米の国の人間としてはつい「ごはんくださーい」と言いたくなる場面ではありますが、ここならまず間違いなく米よりバゲットのほうが旨かろう。と半ばむりやり自分を納得させることにしました。ああ、日本の米でこれを食べてみたい・・・。

ここらへんでだんだん時間がなくなってきたので、他に狙いをつけていたクレープと魚料理はテイクアウトにしてもらいました。二手に分かれてそれぞれ別のお店へ、わたしは魚料理担当。ここでもまたマヒマヒを選びました。分厚い切り身を網の上で豪快に焼くのでえらいこと時間がかかり、相方のクレープが先に来たのでそれをつまみつつ焼き上がるのを待つことに。焼きたての熱い生地の中にとろけたバナナとジャムだかソースだかが強気にからめてあるもので、食べてみたらほぼ予想どおりの激甘ぶりでした。すごいです。咀嚼するたび口の中で砂糖がしゃりしゃり音たててます。何て言ったらいいんだろう、アメリカンな感じのワイルドすぎる甘さとでも表現すべきかしら。相方いわく「どうにか口につめこんで」食べきりました。パンチの効いた甘味でした・・・。ぐったり。
そうこうするうちマヒマヒも焼き上がった模様。たっぷりの米の上に横たえられた魚、そして紙コップ入りのケチャップソースという3点セットを袋に入れてもらったところで時間が来ました。急いで集合場所へ向かったら他は全員揃ってたので即出発。遅れてはいないのだけれど何となく気が咎めます。ごめんなさい。
車が走り出したとたん、前の席に座ってたカップルのダンナさんの方がやらしい口調で「なんかさぁ、炭火臭くね?」等と言い出したので「ああ、きっとこのマヒマヒが臭いんだろうなぁ」と恐縮しつつ「だからって何もそんなこと言わなくたって・・・」という小さな憤りをも感じてしまい、困った気持ちで悶々としたまま相方と目配せしあうことしばし。しかしそのカップルは市街地からほど近い某ホテル前ですぐに降りたので「そのくらい歩いたってすぐじゃんよ!」等とこっそりつっこみ入れつつ毒づきあってうさばらし。性格わるくてごめんなさい。でもね、ダンナさんもちょっとばかし大人げないと思ったんだ。公の場で臭いだなんて言っちゃいけないよ、それはよほどのことでない限りは。や、元はと言えば悪いのは自分らなんですが。えへ。
20分ほどでホテルに到着、まずはマヒマヒにかぶりつきました。ここで食べてもまだじゅうぶん温かいです。あっさり塩味のハーブ焼き、脂が落ちてるせいか大して空腹でもないのにどんどん食べられてしまいます。いいなあ。これを食べるためだけに南半球に来てもいい、と思えるくらいの美味しさですよ。たまりません。好物がまたひとつ増えました。わーい。
さんざん食べてもう動きたくないような気分ですが、どうにか気力をふりしぼってシャワーを浴びて荷物まとめて帰り支度を。お土産類がきちんと収まるかどうかはらはらしながらトランクの隙間を埋めていったら、意外にすんなり収まったので拍子抜けしました。トランクって、詰めようによってはかなり物が入るんですね。知らなかったよ。まあ、今まで使ったことがなかったんだから当たり前っちゃ当たり前です。ちゃんと借りてきてよかったー。わたしのぶんは旅行代理店からのレンタル品でしたので。
で、そのままわりと早いうちにチェックアウトの手続きを。今回はわけのわからない加算料金をつけられることもなくスムーズに終了できました。ひと安心。そのままロビーでのんびりしながら時間が来るのを待ってたんですが、集合時間ぎりぎり頃にはレセプションがとんでもない勢いで混み合ってました。となると当然、迎えに来た大型送迎バスにはその全員が乗り込むわけで。いったいどこに隠れてたんだ、つうくらい大量の日本人がまけ出てきてます。ほえー。
空港到着後、ガイドさんの説明を受け荷物の手続きを済ませたところでまずは両替に走る相方。が、予想に反して意外に空いてたみたいです。そういうもんなのか?と思ったらお土産屋さんが大盛況でした。そうか、みんなここで最後に残ったCPFを使い切るのだな。わたしもヒナノビールを買いたい思いにかられましたが、飛行機の中でたんまり飲めるぜとおのれに言い聞かせてがまん。来たときの反省がまったく生かされてません。いいのかそれで。
その後、飛行機に乗り込むまでの待ち時間が長すぎたので、席に着くなり酒をあおって眠りました。機内食のシャオメンサラダはちっともおいしくなかったです。日本に着いてまず最初に食べたもの、それは駅のホームの立ち食いかけうどんでした。ただいま日本。もともとあまりフットワークの軽くない性分ゆえ、次がいつになるか見当もつきませんが、この先また暖かい国へ行けるのだとしたらそのときはまたタヒチを選ぼうと思います。おしまい。