almost everyday.

its a matter of taste, yeah

その後の10年間の話

さてと、わたしも今日から40代。というわけで、10年前のこのエントリの続きなど。遡ること10年前の記録、その内容は「30歳までに好んで聴いた30曲を列挙する」というものでした。で、10年経つけどその後どう?とばかり更に10曲追加で選んでみた次第です。選出にあたり、留意した点は次のとおり。

  • 30歳到達時点(2008年6月)以降にリリースされた曲を対象とする。
  • 前回時点で選出済みのグループ等は除外する。

つまり、純粋に「30過ぎてから出会った楽曲」のみをカウントするということです。それ以前から知ってはいたけどここ10年で特にハマったもの、ファーストコンタクトが10年以上前の旧譜、といった例外もあるにはあるけどそれはそれとして、ひとまずどどっと並べてみましょう。

  • 01.アイドル誕生のテーマ / 徳永憲(2008)
    裸のステラ

    裸のステラ

    「(500)日のサマー」あるいは「モテキ」における最高にハッピーな場面のひとつ、それは主人公が恋の始まりの高揚感でもって街中をパレードよろしく歌い踊るところ。あれを映画よりも先に音楽でやってのけたのがこの曲だ、とわたしは勝手にそう思っています。低い声で呟くように歌われる「君のような人はどこを探したっていない / 君のような人を世界は待っていたのさ」という必殺のライン、歓喜のファンファーレ。この場合の「世界」とは「僕のすべて」であり、そのすべてが極彩色に塗り替えられる瞬間の輝きそのものと言えます。最高。徳永さんに関して言えば、アルバム単位だと「スワン」「アンサンブルー」を特によく聴き返しています。
  • 02.Cotopaxi / The Mars Volta(2009)
    八面体

    八面体

    変態。ド変態。冗談みたいに手数の多いドラム、鬼気迫る音圧と驚異的テクニックを併せ持つギター、およそ成人男性とは思えないクリーンかつハイトーンなボーカル。ジャンルは違えどその濃さ・過剰さ・やりすぎ感はマキシマムザホルモンに相通じるものがあり、聴くには相応の体力を要するにもかかわらず確実にクセになるというとんでもない存在。つまり、ものすごくキャッチーでもあるということです。アルバム単位では「八面体」と「ゴリアテの混乱」を一時期狂ったように聴きまくっていて、その後もほぼ一定の周期で自分内ブームが再来する劇薬的ポジションに君臨し続けています。2017年には前身バンドAt The Drive-Inが復活、こちらも強烈。
  • 03.踊る脳 / monobright(2009)
    monobright two(初回生産限定盤)

    monobright two(初回生産限定盤)

    作者・桃野陽介曰く「ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ"Exodus"のどエロ版」。スカとレゲエとその他もろもろが渾然一体になったエネルギッシュなサウンドもあいまってバンド屈指の名曲(迷曲)と化し、ほぼすべてのキャリアにおいてライブ定番曲としてプレイされていました。わたし自身、2010年以降彼らのライブを少なくとも10本以上見ておりますが、これをやらずに終わったことは多分一度もなかったはず。彼らの頭おかしい感じの曲*1は大概どれも妙な具合に耳にこびりついて離れなくなるのですが、その系譜の中では特に「紅色ver.2」「バタフライングリップス」が好きです。活動再開をずっと待ってる。
  • 04.ゆうべの秘密と月曜日 / でぶコーネリアス(2009)
    SUPER PLAY

    SUPER PLAY

    バンドの名付けは峯田和伸、未成年ゆえ親の承諾書つきでフジロック出演、高校の卒業式当日に本家コーネリアスオープニングアクトを務め、21歳の誕生日にレコ発ライブそして解散…という数々の逸話と困惑を残し嵐のように去って行ったハードコア界の異端児、でぶコーネリアス。その若さにふさわしく、常に全力で絶叫しながらも昭和歌謡やブラックミュージックへの造詣を見せつけていた中心人物・藤田千秋はいつか必ず何らかの形で世に知られる存在となるはず、と信じ続けて早幾年。2013年でぶコーネリアス復活、その翌年にはP-VINEからジャポニカソングサンバンチとしてアルバムをリリース、と少しずつしかし確実に表舞台へにじり寄りつつあります。このひとは凄いですよ。「いつか何かとんでもないことをやらかしてくれそう」というわくわく感があります。ものすごく。
  • 05.回教徒の朝 / kokyu(2010)わたしの場合「地元にこのバンドがいて誇らしい」と思えるのはkokyuだけ、という状態が既に10年あまり続いております。熱く疾走するツインドラムに黒くてぶっといベースライン、変幻自在の鍵盤とどこまでも清冽なサックス、男臭くも抑制の効いたクールなボーカル&ギターにトロピカルなスティールパンまで揃ってる、ってそんなバンドどこにもいないよ。アンダーグラウンドの闇と南の島の眩しい光を併せ持つ唯一無二の存在、仙台に居続けてくれてありがとう。本当に誇らしいです。今月23日には仙台市内でツーマンライブが催されるので是非。
  • 06.夢うつつ / シュリスペイロフ(2011)
    0.7

    0.7

    そもそもの出会いはブックオフ。「ドア」「ピアノ」「バタアシ」あたりの緩急自在なリズムパターンにたちまちノックアウトされ、旧譜を漁ってそれからようやくリアルタイムで聴けたのがこのアルバムでした。前述3曲の流れを汲むオープニングはもはやお家芸と呼べる域に達していますが、中盤じっくり聴かせる「花を這う」なども素晴らしいです。歌詞があまりに艶めかしいので聴いててどきどきしてしまう。近年はピロウズさわおさんの寵愛を得て、毎年のように音源をリリースしてくれるのが大変うれしくありがたいです。さわおさんは偉大。願わくば、もっと足繁く仙台にいらしてくれますように。
  • 07.T.O.R.N.A.D.O. / The Go! Team(2011)
    ROLLING BLACKOUTS

    ROLLING BLACKOUTS

    現在のようにTwitterInstagramが普及するよりずっと前、メールで写真日記を更新できるサービスと言えば「ヤプース!」でした(なつかしい)。可愛らしくてとっつきやすいテーマ(フォーマット)が多く、ユーザー層も全体的になんとなくキラキラしていて、眺めるだけで楽しかった覚えがあります。ここで出会ってオンラインのみで仲良くしていた永遠のギターキッズさんが一時期熱病のごとくハマっていたのがThe Go! Teamで、つられてわたしもあれよあれよと旧譜含めて丸ごとぜんぶ聴き漁る事態に。性別も国境もハナから一切気にしちゃいない極彩色の自由な音色は、出会いのきっかけとなったヤプース!のにぎやかさと共に記憶に残っています。バンドの中心人物イアン・パートンはその後、ももクロに楽曲を提供したりも。ちなみに、ここで挙げた曲は某バラエティ番組のジングルとしても使用されています。きっとイントロ一発で「ああ!あれ!」となるはず。
  • 08.I Just Wanna Treat You Right / Silver Sun(2013)
    A LICK AND A PROMISE

    A LICK AND A PROMISE

    遡ること20年以上前、90年代半ばに英語圏でアツい音楽と言えばイングランドブリットポップウィーザーを筆頭とするパワーポップ勢でしたが*2、そのどちらにも分類しがたい鬼っ子的存在がシルヴァー・サン。おそろしくキャッチーな歌メロと裏声コーラスを駆使したサウンドはまさしくサーフィンUSA、にもかかわらずロンドン発というねじれが孤高のパイオニアっぷりを発揮していました。時は流れて2013年、活動ペースもすっかり落ち着き「シルヴァーサン?ああピックアップスね!」という認識が定着しきったところへ突如7年ぶりの新譜がリリースされたのですが、これがまあとんでもなくて。これまで一体、どこで冷凍保存されてたの?と羽交い締めにして問い詰めたいほどポップでフレッシュで最高です。惚れ直しました。
  • 09.マジックタイム / HINTO(2014)
    HINTO×group inou

    HINTO×group inou

    かれこれ10年以上ずっと好きで聴き続けているgroup_inou、彼らもまた馴れ合い的な関係性に重きを置かず「対バンはするけど普段から特につるんだりしない」という一匹狼的スタンスを貫いてきた存在と言えますが、そんな彼らが唯一共同名義で音源をリリースしたバンドこそHINTO。緻密かつ手数の多いドラムと男気あふれるベースのタッグに、変幻自在の音色を生み出す要塞のごときギターと艶やかなハイトーン男性ボーカルが乗っかる希有な存在であります。たった一度だけリリースされた彼らのスプリットシングルは、懐かしのビックリマンチョコを模したジャケットといいメンバー全員が全力でヤンキーになりきったアー写といい「俺の中の少年っぽいメモリー」とでも呼ぶべき要素が炸裂しているやんちゃな作品。そのあまりにもトリッキーな1曲だけで、すっかり虜になってしまいました。とんでもない力量。
  • 10.ハイハイあかちゃん / CHAI(2017)
    Pink

    Pink

    ここ最近、自分の中で大きく変わったところと言えば、重い腰を上げ遂に音楽ストリーミングサービスを利用し始めたこと。これに尽きます。以前から無料会員登録だけは済ませておいたものの、全曲シャッフル再生されるとかオフライン保存不可とか何かしらこう今ひとつ使い勝手がよろしくなくて半ば放置してたんですね。しかし、こないだの年末にspotifyがプレミアムプラン3か月間100円サービスというキャンペーンを始めたところで状況は一変。iPhoneひとつで身軽にあれこれ聴ける環境が想像以上に心地よく、外出時に限ってはほぼ完全に軸足がこちらへと移行しつつあります。せっかくだからと手持ちのiPod ClassicにもBluetoothトランスミッターを搭載し、完全ワイヤレス環境を手に入れるまでに至りました。そんな中、現在進行形でもっとも聴き込んでるのがCHAI。とてもいいです。SNS&ストリーミング世代の申し子とでも呼ぶべきフットワークの軽さで国内外にファンを増やし続ける姿は頼もしいの一言に尽きるし、曲も歌詞も歌声もアートワークもどこまでも自由で楽しげなので聴いてて顔がにやけてきてしまう。きっとこれから長く聴き続けることになると思います。

…といったところで合計10曲。思い起こせばこの40年、レコードに針を落としCDを蒐集しMDにはかすりもしないでiPodにうつつを抜かし、ここに来て遂に「メディアを所有しない」という未知の領域へと足を踏み入れつつあります。この先の10年はどんな10年になるのでしょうね。願わくば、音楽への憧れと敬意とこれに親しむ喜びを持ち続けていられますように。

*1:言うまでもなく褒めてます

*2:わたしの中では