almost everyday.

its a matter of taste, yeah

ロケットマン

  • いつかの代休、折しも台風15号が接近中。電車の運休情報に一喜一憂させられることなく月曜の朝を迎えることができたのは大変幸運だったと言えるでしょう。幸いにもここ仙台は直撃を免れ、8時頃にやや強い雨が地面を叩いた程度で収まりました。そんなこんなで朝いち、チネにてロケットマン。辛いのとも悲しいのとも違う、まして楽しいのでも感動するのでもない、ただただこの身を突き刺すがごとくひたすら痛くて苦しい映画でした。冒頭から2時間ずっと、歯を食いしばって嗚咽をこらえ続けていた。

  • マーヴ・フィルムズやロケット・ピクチャーズのクレジットとタイトルバックがシームレスに連なっていく導入部。洋画にはよくありがちというより最早おなじみの、老若男女が環状に椅子を並べて語らうセラピーの場面。ここに極彩色のステージ衣装をまとったエルトンが鼻息荒く乗り込むところから物語は始まります。どんな子ども時代だったのかを問われた彼が回想する過去、この時点からして既に涙でスクリーンが滲んでしまう。何故ならその画は、底抜けに明るいメロディーと大勢のご近所さんの群舞に彩られているにも関わらず、色褪せた写真のように彩度が低く曇天に覆われていて、その中心にいるはずの現在の彼だけが鮮やかな衣装を身につけているからです。自分の記憶の中でさえ、その存在がぽっかり浮いてしまうという強烈な孤独をいきなりまざまざと見せつけられました。
  • 不器用な父と奔放な母、日和見主義の祖母から満足な愛情を与えられなかったとは言え、幼くしてその才能を買われ王立音楽アカデミーへの推薦を得たエルトンはパブでの演奏、ツアーバンドとのドサ回り、レコード会社への売り込みを経て生涯の親友であり共同製作者たるバーニーとの出会いを果たします。ここからはまさに飛ぶ鳥を落とす勢い、ポップスターの名にふさわしいパフォーマンスでみるみるのし上がっていくわけですが、その名声に比例して見た目がどんどん派手になっていくあたりがまたいたたまれないのです。煌びやかに巨大化していく被りものやステージ衣装は、さながら孔雀が自慢の羽根を広げるかのよう。「僕を見て、僕を愛して」と言わんばかりの心の叫びに他なりません。ただ、悲しいかな彼のセンスは、曲づくりや歌の才能同様あまりにも常人とはかけ離れていました。愛してほしいともがけばもがくほど、その見てくれがあらぬ方向へと突き抜けてしまう。決定的なズレは大きく広がるばかりで一向に縮まらず、誰も彼に追いつこうとはしないばかりか、寄り添ってくれようとした優しい人をも遠ざけてしまうのです。
  • ミュージカル映画が避けて通ることのできないツッコミと言えば「この人たちは何故いきなり歌いだすのか」に尽きるわけですが、本作に関して言えばその不自然さが奇妙にフィットしていると感じました。それはつまり、エルトンの自己プロデュース術、ひいてはその作為性や露悪性がミュージカル映画の本質的な居心地の悪さに相通ずるからではないか。エルトンを演じるタロン・エガートンこそ、かつてゲスト出演のエルトンをさんざんコケにしまくったあのキングスマンシリーズで主役を張っているという事実までもがこのブラックな笑いにひと役買っているとしか思えないのです。どこまでも、ただただひたすら居心地が悪い。その針のむしろのような痛さがあまりにも切実で、泣いても泣いても嗚咽が止まらないのでした。
  • 更に言うなら、その居心地の悪さの正体とは、おぞましいことにわたし自身の普段の生活とも地続きだったりするのです。愛を得ようと羽振り良く振る舞い、誰にも理解されないと嘆き、薬に溺れるエルトン。誰にも嫌われてはならないと仕事を抱え込み、誰も助けてくれないと落ち込み、酒で憂さを晴らすだけの自分。もうだめだ。見続けるのが辛い。辛くて痛くて息ができない。
  • 実在する、それも存命のポップスターにネタバレもクソもないのであらかた書いてしまいますが、後日譚をエンドロールでかろやかにやり過ごす演出はたいへん後味がよかったです。とは言え、クライマックスに至るまでのしんどさがあまりにもヘヴィすぎて見終えた後はしばらく放心状態でした。それでも言おう。生きてサヴァイヴし続けることは何より尊いはずなのです。それがどんなに醜く、見るに耐えなくても。
  • 先発は岸。パカパカ打たれてあれよあれよと4失点、つらい。とてもつらい。何がつらいって、エースが打たれるという事実に慣れて受け入れ始めてしまっている自分自身が何よりつらい。とは言え勝った。フェルナンドのタイムリーで追いついて浅村の猛打賞で何とか勝ち越せた。キャプテン銀次の捨て身の走塁も下水流の守備も光ったし、得点に結びつかなかったとは言え浅村の今季初盗塁(!)にもしびれました。明日は移動日、東京ドームの2連戦こそ前カードの勢いそのままに勝ちおおせたいものであります。おやすみなさい。