- 朝いち、チネでトスカーナの幸せレシピ。もうね、あれです。タイトルまんま。観終えた後の幸せな余韻が心地よいです。何がいいって演出が手堅い。安心の予定調和、あるべきところに全てが収まるこの充足感よ。
- まずは冒頭、囚われの身の主人公が晴れて出所する場面からしてふるっています。塀の外へと出るにあたり、没収されていた荷物の数々を受け取る主人公。財布、時計、ベルトといったごく一般的な身の回り品に続いて差し出されるのは半ダースほどのコンドームそしてソムリエナイフ。この一連の流れだけで男がどんなパーソナリティの持ち主なのかが伝わってくる、きわめて手堅く雄弁な演出であると感じました。酒にかかわる何らかの職に就いていて、 おそらくちょっとワルい感じの、そしてまったく枯れてない男。これならきっとストーリー展開もサクサク分かりやすいだろうな、と冒頭2分で確信させてもらえました。本当にそのとおりだった。最初から最後までこちらの予想を超えてくることがない、しかしそれが心地よいと感じられる上質な小品でした。
- アスペルガー症候群の若き青年を導くべき存在であるはずの主人公もまた彼に学んでいる、という善き共鳴がこの上なくさりげなく、しかし雄弁に描かれる場面。それは、三つ星シェフのお披露目として招かれたレストランの下見にあたり、ほんのわずかな椅子のズレをごく自然な動作でもって揃えてみせる一瞬の動作でした。こういう細部を取りこぼさずに描いてくれる作り手は信用できるな…と何だかじーんとしてしまったんでした。
- あまりにテンポよく話が進むので、実際にこうした障害と隣り合わせの生活を送っている層からしたら物足りないとかリアルじゃないとか思われちゃうかもしれないな、という懸念はあるもののグイド役のルイジ・フェデーレの熱演が光るぜ…!と静かに拳を握りしめつつエンドロールを見守った次第であります。劇中、わりと唐突に流れるジャムも小気味良くて素敵でした。監督の趣味なのかしら?
- 夜はこちら。まさかのワンマン2時間半超、存分に踊りたおしてまいりました。
それからええと、開演直前&終演直後にコステロのPony St.がかかってわたくしブチ上がりましたよね。セレクトが渋いぜ…!| Pony St. - Elvis Costello https://t.co/uxUqDKZU6Q
— almost everyday. (@almost_everyday) 2019年12月1日 - アンコールが終わった時点でダメ元でふたたび手を叩きながら待ってたらまさかのダブルアンコールが始まりましたよね。それも、忍さんがフロアに降りてきてそこにマイクスタンド立てて歌うっていう夢のような時間でしたよね。手を伸ばさなくても届く距離、ほんの30cm先であの甘い声が発せられていると思うとほんっと酸欠寸前でクラクラしながら拳突き上げて踊るより他になかったって話ですよね。ああ、夢に見そう。むしろ食い気味に出てきてほしい。おやすみなさい。